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ページ25

扇を一閃。――ふるった。
池、全体に向けて。

「天乃斑駒乃 耳振立�読 聞食世登 畏美畏美母白須」

祝詞の最後を唱えると同時に、突風が吹く。
一瞬の出来事。

「……やっぱ、お前大鵬様の花嫁だな」

やれやれと、一部始終を見ていた青蘭が首を振って私の横に立った。

「池一帯の瘴気を吹き飛ばすなんてなかなかできないぞ……」

「もう、なるべく誰も憎しみにとらわれてほしくないから」

池に流れた血の色が消えることはない。
でも、辺りを包む瘴気は消えて、清涼な気が池に戻ってくるのを感じた。

それでも。
館から感じる、人の恐れ。

――人喰いめ。
――よくも騙したな。
――憎い、憎い……怖い。

その気は変わらず漂ってきていた。

「生き残ったやつらは全員館のなかだろうな」

同じことを感じたのだろう。
青蘭が池の反対で黒煙を上げて燃え盛る赤。
その炎の中にある、館の陰を睨み付けていた。

「……うん」

人の気は感じる。
けど、神様方の気配はもうほとんど感じない。
――それでも。

「行く、か?」

最後に確認するように聞かれた。

「もちろん」

私は迷いなく頷いた。


*

「いいだろう」

そういって。
青蘭は己の内の神気を放出し始めた。
彼の姿がその場から掻き消えた。

「乗れ」

声だけはいつものまま。
青蘭は本来の姿に戻っていた。
まるで成人した鹿のように大きい、稲穂の色をした狐。うっすらと青白い輝きがその体を覆っている。尻尾は三本……柔らかそうな毛並のそれは、それだけで人の形をしていた時の彼と同じくらいの大きさがある。
ふさふさとした尻尾を揺らしながら、私がその背にまたがりやすいよう、4本の足を伏せる形にしてくれていた。

「ありがとう」

私はためらうことなく、青蘭の背に乗った。

「迷い家はすでに機能を失った、ただのだだっ広い館になっている。一気に大鵬様の気配のもとに走るぞ」

「うん!」

私が頷くと。

「振り落とされるなよ!」

叫ぶと同時に、青蘭が地面を蹴って飛翔した。


*

――煙。
1メートル先も見えないくらい、濃い灰色をした煙の中に青蘭は躊躇なく飛び込んだ。

ドン! ガラガラ。

どこかで炎の爆ぜる音がする。同時に、館の一部が崩れていく音。
肌がじりじりと熱い。まるで真夏の昼間、太陽の近くまで雲進で飛んだときみたい。
青蘭の背の上で感じる風が熱く皮膚を焦がす感覚がした。
すると。
少しだけ辺りの煙が薄くなって、周りを見渡すことができた。

▼→←一九章『地獄』



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設定キーワード:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時

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