必要ない、いらない奴？そんなこと言わないでください。Part2【黒バス】

第39話。過去編* ページ9

「ただいま」


挨拶と共に玄関に入る。

靴を脱ぎ、揃えて下駄箱へ。

そしていつも通り出迎えてくれるお母さん。

ドギドキ緊張で破裂しそうな胸を抑え、相談しようと声を…


「え…？」

桃母「…」


出そうとした、叶わなかった。

今、何が起こったの？

空間に取り残される感覚、瞬きを繰り返す。


「痛い…」


じわじわと遅れて頬に走った痛み。

ゆっくりと、頬に手を副える。

私、お母さんに叩かれたんだ…

なんで、どうして？

縋るように、何かの間違えを期待するようにお母さんを見つめた。


桃母「貴方、何やってるのよ！」

「えっ、あ」

桃母「今日学校から連絡があったわ。貴方、同じクラスの香織ちゃんの私物盗んだんですって？」

「は…？」


何それ。

何それ、何それ？

私やってない。

身に覚えのない話に、冷や汗が背を伝う。


桃母「貴方の机の中から、香織ちゃんが無くしたって泣いていた私物が幾つか出てきたみたいよ」

「…し、知らない私じゃっ」


方を押され、背中を扉に打ち付け咳き込む。

今度は突き飛ばされたみたいだった。


…クラスの、人達の嘘だ。


痛む背中に涙を滲ませ、頭を整理する。

間違いない。

私から家族まで奪う気なの？


桃母「口答えしないで、親の顔に泥塗って楽しい？！」

「いっ、たぃ…」


何を言っても聞く耳を持たないとはこの事。

私の事、信用してくれないの？

私、お母さんの娘なんだよ？

自分の評価が第一なの…？


桃母「このっ出来損ない、その上こんな遅くに帰ってくる？！」

「っひ、」


顔を真っ赤に染め上げ、私に怒鳴り散らかす。

…この人は、誰だ？


桃母「さつきがお前の事心配してんるんだよっ、あんたはいつもさつきに迷惑ばかりかける！」


鼻息の荒い顔を近づけ、迫ってくる。

…この人は、誰だ？


桃「お、お母さん？すごい音したけど…」

桃母「さつき、貴方は関係ないから。リビングで待っていて頂戴ね？」


にこり、愛想よくさつきに微笑む。

…この人は、誰だ？


桃母「さつきは優しいくて、可愛い。そして沢山の人に愛されていて…！」

桃「お、おか」

桃母「大体貴方気持ち悪いのよ、急に勉強も運動も出来るようになって…」


娘は、さつき一人で充分よ！

残酷な一言で突き刺し、冷たい目で私を見下ろす。

…この人は、誰だ？


桃「っ！」


また、軽い音がした。

でも私に痛みは走らない。

そして、温かい何かに包まれた。


桃「お母さんのっ、馬鹿！」

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