2664.【5】 ページ14
［翔にぃside］
新しく増えた薬と
その役割も説明して。
「飲めそう？」
和「…ん」
手術は2日後。
局所麻酔でも行えるけど、全身麻酔に
してもらった。
万が一だけど、途中で開頭手術に切り替わることも
考えて。
和「…ん、ん…こわい…」
智「大丈夫だよ。ずっと一緒にいる。
もう恐いことないように、翔が頼んでくれたから」
和「…っ、ん…」
もしまた頭痛に襲われたら…って不安もあって。
なかなか情緒が安定しなくてポロポロ泣くことが
多いんだ。
智「おいで…」
和「…っ、んっ、ん…んくっ…」
そんな時、智にぃは和を腕の中にしっかりと
抱き締めてくれる。
智「なんにも心配しなくていいから。薬も
ちゃんと飲んでるし、大丈夫。…ね？」
和「…ん、う、ん…」
抱き締められて、背中をさすられて…
和の表情がどんどん落ち着いてくるのが分かる。
やっぱり、智にぃの抱擁力はすごいな…って
改めて感じるんだ。
和の心には余裕が生まれて、病気以外の話題も
出てくるようになる。
和「…手術の前、あらしに会いた…」
「ん、会おうな。明日の夕方、屋上からでいい？」
智「よかったね…」
和「…ん、楽しみ」
智にぃの胸の中に顔をグリグリして甘えて
そのまましっかり腕に掴まって、眠りに落ちた。
［智にぃside］
手術当日の朝…
和「…っ、んくっ、持って、く…」
翔「ん、分かった」
ミッキーを手術室まで持っていくんだ…と。
色んな不安が重なって、こうして無茶なお願いを
することで気を紛らわせているんだと思う。
もちろん、手術室にミッキーは連れていけない。
和もそれは分かっているから、翔が「分かった」
って返しても、いつまでもグダグダで…
何かと理由を付けていたいんだよね。
「ミッキー抱っこして、こっちおいで？」
和「…ん、んくっ…」
両手を広げたら抱き付いてきてくれたから、
そのまま抱き締める。
さっき翔が「ここで寝せちゃうね」って伝えて
きたから。
「よしよし…みんな味方だからね」
和「…ん」
忙しなく動いていた背中が、少しずつ落ち着いて
くる。
眠らされるって感じ取ったんだろうね…
『がんばる、ね…』って小さく呟いて、
そのままクタッと意識を失った。
さっきまでしっかりと俺の腕を掴んでいた手からも
力が抜けて…
言い様のない切なさ。
「いってらっしゃい…待ってるからね」
頭をそっと撫でて、手術室へと送り出す。
戻ってきてからもずっと傍にいるからね…
そう約束して。
END
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作者名：空
| 作成日時：2017年9月3日 16時
