2663.【4】 ページ13
［智にぃside］
先生達からの説明を
聞きながら、震える手。
その手がどんどんと冷たくなっていくのが分かる。
どれだけの恐怖だろうと思う…
でも和のお願いはたった一つだけ。
『家に帰りたい』って。
全ての説明が終わった後、ポツリ…と呟いたんだ。
先「澤先生の言うこと聞いて、頑張ろう。
みんな和くんの味方だから」
和「…ん」
翔「薬も少しだけ増えるけど、後でちゃんと
説明するから。な？」
和「…ん」
澤「和くん、お家に帰ろうね」
和「…ん」
澤先生が差し出した手。
和は少し戸惑いながらも震える手を伸ばした。
しっかりと交わされた握手。
澤「よろしくね」
和「…ねがい、しま…」
澤先生の手にギュッと力が入ったのが分かる。
和は一瞬だけ澤先生と目を合わせて、それから
すぐに翔に視線をうつす。
翔「ん、大丈夫」
和「…ん」
翔はしっかりと目を合わせて頷いてやった。
翔「少し2人でゆっくりしてて」
「ん、わかった」
先生と雅紀達と共に部屋を出ていった翔。
和は潤の前では少しはお兄ちゃんになろうと
するから、解放してやりたかったんだと思う。
心配掛けまいと、泣くのを我慢するからね。
「かず…また頑張らなきゃいけなくて辛いと
思うけど、みんな付いてるからね…」
和「…ん」
「手術、頑張れるように…今のうちに心配なこと
全部、翔先生に質問していいからね？」
和「…んっ、んくっ…いっ、ぱい…」
「ふふ…いっぱいしていいよ。翔先生、その為に
いーっぱい勉強してるから。笑」
和「…っ、ん…んっ…」
「頼ってあげて？笑」
コクコクって頷きながら、大粒の涙を零し始めた
和は収拾がつかない程、大泣きした。
背中をさすりながら「そばにいるよ」
「こわくないよ」って伝え続ける。
今回、手術は塞栓術ってやつを取り入れるらしい。
コイルを詰める血管内の手術らしくて、開頭は
必要ない。
その点は和も安心したみたいで「頭、切らなくて
いいの？」って自分で確認していた。
でも塞栓術中に大量に出血したり、何かトラブルが
あった時には開頭手術に切り替えるんだって。
澤先生も先生も翔も、そのことも隠さずに
和にきちんと話をしてくれた。
不安要素は多くなってしまったかもしれないけど
目が覚めて初めて知るより、知っておいた方が
良いと俺も思ったから。
もう和に不信感を抱かせたくはないからね。
和「さとにぃ、ミッキー欲し…」
「ふふ…持ってくるね」
可愛い奴め。笑
絶対、守ってやる。
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作者名：空
| 作成日時：2017年9月3日 16時
