万事屋の坂田くんは狼少年を愛しすぎている(参) (ページ28)

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爆発して崩れていく西棟を愉快そうに見つめるカノウ

叶「やー、あっという間に崩れていっちゃいました」

貴「…は」

無事でいるよな、神楽、新八…

腕は少し動く

足は…駄目か

叶「貴方のせいでお仲間さんは死んだわけですけど、
どうですか？今の気分は。」

ギロリと睨むと、叶はさらに笑みを深めた

叶「薬もまだ切れないみたいですねえ
今のうちに目を取っておきますか…
あ、でも今部下が居ないんでしたね、どうしようかな。」

貴「…お前の仲間も…あそこには、居たんじゃないのか…？」

そう叶に問うと、叶はキョトンとした顔で俺を見た

叶「仲間…？

ああ、茨のことですか…
彼女はそんな大層なものじゃありません。
君は“駒”と呼んでいたけれど、違いますよ。
アレは駒にもなれない、ただの玩具。」

貴「…は？」

叶「ちょっと優しくしたらすぐ懐いてきて、ああ、面白いもんですね
両親の仇の為に今、あの子は命を張ってるんですから
何も知らず、僕への忠誠心だけを大切そうに抱き抱えて、ずっと生きてきて、そして今日、僕の為に死ぬ。
彼女にとってこんな幸せな死がありますか」

貴「両親の、仇…？」

叶「…ああ、ええそうです。
彼女の両親は僕が殺したから」

((ｶｼｬﾝｯ))

刀が、硬い地面に落ちる音がした

壁に縋って歩いてきたのは、迫田茨だった

腕からは血を流し、足は引きずりながら、胸には何ヶ所も破片が刺さってじわじわと出血していた

茨「…え？」

叶「あれ、よく生きてましたね？
先程の爆発に巻き込まれて死んだかと…」

茨「今の…う、嘘ですよね…？
ああ、いえ、愚問でした…
嘘に決まってる…」

叶「…」

茨「だって、叶様はいつだって、優しくて…わたしを…愛してくれたから」

叶「…ええ、愛していましたよ。
僕の言われた通りに動く操り人形のような貴女は、とても都合がよかったから。」

へたりと茨が座り込む

叶「でもね、もう要らないんですよ、キミ」

叶が投げた注射器が真っ直ぐ茨の方へ飛んでいく

女の顔に浮び上がる表情は絶望だけ。

抜け殻のようにただ、そこに座っていた

貴「ッ、何してんだよッ！避けろ！！！
オイ！」

もう死んでもいいって思ってんのか？

生きて、罪を償って、これから幸せになるんだろ

貴「くッ、そ…」

薬のせいで力が入らない。

貴「避けろォォオ！！！」

茨の目から一筋、涙が流れる

茨「…叶、さ、ま…」