そして、愛するエストレラに永劫の詩を【短編集】

聖女の告解《3》 ページ4

…………。





ああ、神よ。私は懺悔します。


私は、一つだけ嘘をつきました。


いつか、貴方は私に「優しくて素敵な人だ」と言いましたね。私は今まで、多数の人にそう言われてきました。だけれども、自分自身はこれっぽっちもそうは思っていないのですから、それについて何も感じなかったのです。強いて言うならば「どうしてそんなことをいうのだろう」と疑問に思うだけでしたが、貴方に言われるとどうもそう思うだけではないのです。

例えるなら、心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥るのです。実際に心臓を鷲掴みにされたことはありませんが、良い例えがこれしか無かったので仕方がありません。
兎に角、貴方にそう言われたくなかったのです。

他の誰かにそんなことを言われても、特に何も感じなかったのに、貴方に言われるとしょうもなく息苦しくなるのです。貴方のびいどろのような澄んだ蒼い瞳に見つめられるとうまく笑うことが出来ないのです。貴方の金色の雲のような美しい瞳に見つめられると、こんな自分がどうしようもなく思えて仕方がないのです。
その点に置いて、私は貴方に嘘をついていたのです。


ーーもうわかったでしょう。私は貴方に好きだと言ってもらえるような人間ではないのです。貴方は先程「優しい貴方を好きになった」といいましたが、その私というものは所詮、嘘の産物なのです。全くの間違いなのです。貴方の目の前にいるのは、生きていることさえ憚られるような化け物なのです。


だから私は貴方に懺悔しました。本当の私を告白したのです。



嗚呼、神さま。



私はこれ以上、あなたを騙し続けたくはなかったのです。

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