6：出会いは森の中で ページ7
とっても仲が良いのね、と微笑んだヒカリの傍で、カイトがきょろきょろと何かを探す。それはあの深緑のミリタリーキャップで、自身のすぐ傍に置いてあるのを見つけると、目深に被った。
その一連の動作をぼんやりと眺めていたヒカリだったが、カイトがふらりと立ち上がったのを見て、慌てて声をかけた。
「カイト？どうしたの？」
「ありがとう、お世話になったよ」
「え！？」
礼儀正しく一礼したカイトは、覚束ない足取りで森へ入って行こうとする。食事を終えたグラエナとエアームドも礼を言うようにタケシを一瞥すると、何の疑問も抱いていない様子でカイトの後に続いたのだ。
「ちょっと待てよ！」
堪らずその腕を掴んだのはサトシだった。
カイトは何故彼が自分を引き留めるのだろうと首を傾げ、グラエナは恩人であるにも関わらず険しい目を投げかける。エアームドだけは相変わらずの無表情だったが。
「お前もう出発するのか！？」
「…そうだけど」
「倒れたばっかりだし、無理するなよ」
「無理は、してないよ」
「お前だけじゃなくて、ポケモン達も！」
それでも納得のいかない様子で、カイトとグラエナは揃って同じ方向へ首を傾けた。
「もうすぐ日が傾き始める。夜の森で動くのは避けた方がいい。大事をとって、今日は俺達と野宿しないか？」
自分の思いが伝わらない歯痒さにぐぬぬ、と険しい顔つきになったサトシを見て、タケシがすかさず助け船を出した。
その言葉を聞いたカイトは、ポケモン達へと視線を落とした。
2体ともタケシの手当と食事である程度は回復している。だが、とても全快とは言えない状態だった。
真っ直ぐで純粋な目を向けてくるポケモン達にふっと淡い笑みを落とすと、カイトは再び頭を下げた。
「…見ず知らずの僕にここまでしてくれてありがとう。お言葉に甘えさせてもらってもいいかな…？」
「もちろんだぜ、カイト！」
「それじゃ、今日の夕飯は特別メニューにするか！」
「わあ！やったね、ポッチャマ！」
暖かく迎え入れた彼らの視界の外で、グラエナが『何故？』と困ったようにカイトを見上げた。
それを切ない表情で受け止めたカイトは、優しくその頭を撫でるのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜光 - ピカチュウ・・・が崩壊してる(;・д・) (2018年12月28日 21時) (
レス) id: c1c7fb77d9 (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - さん» 謎を作ってしまい本当にすみませんっ！ずっとミスしたままになるところだったので、とても助かりました！そう言っていただけてとても嬉しいです、ありがとうございます！ (2017年1月10日 15時) (レス) id: 2edc5e6d88 (このIDを非表示/違反報告)
- それに、よくある作品のように話の内容もぶっ飛んでなくてしっかりしてるし、文章も上手のようなので……とても好きです！これからも頑張ってください。((突然すみませんでした。 (2017年1月10日 13時) (レス) id: 3c17733505 (このIDを非表示/違反報告)
- あ、いやいや目に余るなんて……貴方の作品は凄いと思っています！そういうことだったんですね。謎が判明して良かったです。 (2017年1月10日 13時) (レス) id: 3c17733505 (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - さん» 私も時折見返して変換ミスがないか確認していますが、それでも見落としてしまうことがあります。目に余るようでしたら、何話目にミスがあるのか教えてくださると嬉しいです！出来る限り早く対処させていただきます。ご迷惑をおかけしてすみません。長文失礼致しました。 (2017年1月10日 12時) (レス) id: 2edc5e6d88 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こうもり | 作成日時：2016年7月18日 7時
