君が僕の希望だから

39：変装の二乗 ページ40

「でも何でエアームドに似せたんだ？」
「カイトがコンテストに出るからよ」
「そっちの方がヒカリの傍に居やすいんだ」
「…いいのか、カイト。お前バトル苦手だって言ってただろ？」


いくらコンテストとはいえ、二次審査はバトルだというのに。


「…うん。僕なりに頑張ってみる」


そう言うと、Aは2体の仲間をボールから出した。
少女の姿をしたAに目を見張ったグラエナとエアームドに、小さく頷いてみせる。


「そういうことで…エアームド、力を貸してくれる？コンテスト、苦手かもしれないけど」


『やれるだけのことはやってみる』


エアームドは頷き返した。
その隣のグラエナと視線を交わす。ライカには、カイトの手持ちにグラエナがいると知られている。バレる危険性を考えると、グラエナを出すわけにはいかないのだ。


「グラエナ、今回は見守っててね」


Aはグラエナに向ける視線に『危険なことしてごめんね』という気持ちを込めた。

もちろん、グラエナはそんなAの心情などお見通しだった。そして、彼女の決断を全力で支えると決めている。


『にしてもなあ…こんな状況じゃなければ』


幼馴染であるAは、自分の見た目に頓着
しない性分だった。
着心地が良ければいい。何なら着られればいい。そんなことしか考えていなかったAが、こんな風に着飾ることはなかった。
それを心のどこかで残念がっていたグラエナは、見事にドレスアップしたAを目の前にして、彼にしては珍しく『ぶん』と尻尾を振った。

もしグラエナが人間だったなら、拳を力強く天に突き上げているところだ。

だがしかし、眼鏡が邪魔である。
あの澄んだAの目がレンズ越しにしか見えない。主張の激しいデカフレームで視線が分散されてその瞳の輝きに気付くものはほとんどいないだろう。勿体無い。変装としちゃあ百点満点だろうが、ああ勿体無い。


『だがな…俺はテーマがお前なことが気にくわねぇ』
『何故だ。お前が出れぬ理由は分かっているだろう』
『それとこれとは話が別なんだよ！！』


べしり、と半ば八つ当たりの形で、グラエナはエアームドを尾で叩いた。

分かり易く不機嫌モードになったグラエナに、サトシの肩からピカチュウが降りてきた。
ちなみに、カイトのコーディネートをヒカリが説明しているので、人間達はこちらを見ていない。


『どうしたのさ、君にしては気が立ってるね』
『…まあな』
『そんなに気にすることかなぁ』

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