28:初めての町 ページ28
カイトがトレーナーであると知ったときから、是非バトルを、と思ってはいたのだが……何にせよ、グラエナとエアームドが本調子ではなかった。
しかし、今朝タケシが2体を診たときには、全快という結果だった。目に見えて元気になっている上、グラエナの毛並みも艶やかに、エアームドの体表も光沢が戻ってきている。もうお相手願っても問題はないのだ。
先程の陰はどこへやら、輝かんばかりの表情でサトシはカイトを見るが……カイトは苦笑いを返すだけだ。
「うーん…僕、バトルはあんまり好きじゃないっていうか、得意じゃないんだ。サトシのお誘いを断るのはすごく心苦しいんだけど…その…」
「えぇー」
「まあまあ。確かにバトルは互いの親睦やポケモンとの絆を深めるいい方法だが、決して強いるものじゃないぞ」
口を尖らせたサトシは、タケシのフォローで渋々納得する。
相変わらずねー、と茶々を入れたヒカリと軽口を叩き始めたサトシを横目に、カイトは胸にぐっと重いものが詰まる感覚を覚えた。
(サトシには、悪いことしてばっかりだ)
込み上げてくる罪悪感に、そっと俯向く。
そのとき、地面の土色と草木の緑色の他に、目に眩しい色彩が目に入った。
何だろうと気になって手を伸ばすと、それはポップな色使いのなされている一枚のチラシだった。
「カイト、どうしたのそれ」
「…落ちてた」
少し砂埃で汚れたそれの、皺のついた部分を手で伸ばした。
ピンクのラインが可愛らしいデザインに、オレンジ色の主張が激しい文字が並ぶ。
「『ロキシタウン・収穫祭』?」
カイトが一番大きな文字を読み上げると、周りの3人が口々にその名を呟く。
「ロキシタウン…。タケシ、聞いたことあるか?」
「いや。地図には載ってると思うが…」
「…ねぇ。調べるまでもないんじゃない?」
「ヒカリ…?どうして?」
首を傾げたカイトに答えるように、ヒカリがすっとある方向を指した。
その先を視線で追うようにして、3人はチラシから顔を上げた。
ヒカリの指先が示すのは、歩いていた道の前方。土色の道路がしばらくすると落ち着いた色合いのタイルに変わっており、その向こうに見える家々の屋根。…そして、道路の脇に立てられた看板には『ロキシタウン』の文字が。
「だって、すぐそこだもん」
「「「…あ」」」
かくして、カイトを旅仲間に加えて初めての街はロキシタウンとなった。
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桜光 - ピカチュウ・・・が崩壊してる(;・д・) (2018年12月28日 21時) (レス) id: c1c7fb77d9 (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - さん» 謎を作ってしまい本当にすみませんっ!ずっとミスしたままになるところだったので、とても助かりました!そう言っていただけてとても嬉しいです、ありがとうございます! (2017年1月10日 15時) (レス) id: 2edc5e6d88 (このIDを非表示/違反報告)
- それに、よくある作品のように話の内容もぶっ飛んでなくてしっかりしてるし、文章も上手のようなので……とても好きです!これからも頑張ってください。((突然すみませんでした。 (2017年1月10日 13時) (レス) id: 3c17733505 (このIDを非表示/違反報告)
- あ、いやいや目に余るなんて……貴方の作品は凄いと思っています!そういうことだったんですね。謎が判明して良かったです。 (2017年1月10日 13時) (レス) id: 3c17733505 (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - さん» 私も時折見返して変換ミスがないか確認していますが、それでも見落としてしまうことがあります。目に余るようでしたら、何話目にミスがあるのか教えてくださると嬉しいです!出来る限り早く対処させていただきます。ご迷惑をおかけしてすみません。長文失礼致しました。 (2017年1月10日 12時) (レス) id: 2edc5e6d88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2016年7月18日 7時