2:出会いは森の中で ページ3
ぴぃか、と小さく鳴いたピカチュウは、水面に突き出した岩を渡って向こう岸へと急ぐ。サトシを見る目は緊張感をもっていて、素早く相棒の意図を汲んだサトシもその後に続いた。
ピカチュウはサトシが自分の方へ渡ってきたのを確認すると、森の奥へと走り出した。時折立ち止まり気配を確認して、また走る。
いくらもしないうちに、ピカチュウは目的へと辿り着いた。
「…ここに何かあるのか?」
「ピッカ!」
力強く声を上げた相棒に、サトシは辺りを見回した。ピカチュウはあんなに急いでいたのに、特におかしなものはない。
ーーいや、待て
茂みから覗いているあれは何だろう?
自然的な緑の中に小さく見えた人工の色は、スニーカーの形をしている。
サトシは小さく息を呑むと、その茂みの向こうへと駆け寄った。
「これって…!?」
そこにいたのは『人』だった。
背後の木に身体を預け、ぴくりとも動かない。
最悪の事態を考えて青くなったサトシに、ピカチュウが声を投げる。サトシは我に帰ると、早急に指示を飛ばす。
「ピカチュウ、タケシに伝えてくれ!!」
来るときとは段違いのスピードで、黄色い身体は森の中へ消えていった。
それを確認すると、サトシは動かぬ身体へと視線を戻す。
深緑の帽子を深々と被っていて、顔は見えない。同色のロングコートを羽織っているがサイズは全く合っておらず、上から巻いたベルトで調整していた。シルエットを覆い隠すそれから覗く黒いスキニーがやけに細く感じる。
「大丈夫!?」
肩に手をおいて強めに呼びかけるも反応はない。側に跪いて距離を詰めたことで分かったが、帽子も上着も、少し覗く白い頬も泥や砂埃で薄汚れている。
一刻も早く手当をしなくては。
サトシは自分よりも少し小柄なその者の肩を担ぎ、元来た道を辿り出した。
「サトシ!」
丁度小川まで戻ってきたとき、向こう岸にはタケシとヒカリ、そして緊急事態を2人に伝えたピカチュウがいた。
「その人、どうしたの!?」
「森の中で倒れてたんだ!!手当してあげなくちゃ!!」
それを聞いたタケシは素早く川を渡り、サトシの元へ駆け寄る。サトシがなんとか連れてきた者の背丈が担げそうであると判断すると、抱え上げた。
「早く戻ろう!」
「ああ!!」
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桜光 - ピカチュウ・・・が崩壊してる(;・д・) (2018年12月28日 21時) (レス) id: c1c7fb77d9 (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - さん» 謎を作ってしまい本当にすみませんっ!ずっとミスしたままになるところだったので、とても助かりました!そう言っていただけてとても嬉しいです、ありがとうございます! (2017年1月10日 15時) (レス) id: 2edc5e6d88 (このIDを非表示/違反報告)
- それに、よくある作品のように話の内容もぶっ飛んでなくてしっかりしてるし、文章も上手のようなので……とても好きです!これからも頑張ってください。((突然すみませんでした。 (2017年1月10日 13時) (レス) id: 3c17733505 (このIDを非表示/違反報告)
- あ、いやいや目に余るなんて……貴方の作品は凄いと思っています!そういうことだったんですね。謎が判明して良かったです。 (2017年1月10日 13時) (レス) id: 3c17733505 (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - さん» 私も時折見返して変換ミスがないか確認していますが、それでも見落としてしまうことがあります。目に余るようでしたら、何話目にミスがあるのか教えてくださると嬉しいです!出来る限り早く対処させていただきます。ご迷惑をおかけしてすみません。長文失礼致しました。 (2017年1月10日 12時) (レス) id: 2edc5e6d88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2016年7月18日 7時