検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:30,566 hit

299:珊瑚姫 ページ3

あなたを助けたのは私です。あなたに会うためだけに、私はここにいるの。

それを伝えることもままならず、王子に微笑みかけるサクラビス。

(その笑顔が「嬉しい」とか「楽しい」とか、そんな感情だけで出来てるわけないだろ!早く気付いてやれよ!色とか表情とか…目とか!まんまサクラビスじゃんか!!)


サトシの対ポケモン用の鋭い観察眼が誤作動を起こしたのか。

切なげに瞳を揺らす少女の心など露知らず、明るく笑いかける王子がもどかしくてならなかった。


(…Aに、そんな顔させんなよ…!!)


サトシの目に映る桜色の少女は、Aなのか、サクラビスなのか。サトシ自身でさえも理解していなかった。









人間となって王子に近付いても、彼の側には隣国の王女がいた。
サクラビスより幼い王女様は、いつも王子に「遊んで」とせがみ、王子がサクラビスに構う時間はなかった。

せっかく、こんなに近くに来られたのに。

月の光が海を照らす夜、サクラビスは城を抜け出して海岸の岩場に腰掛けた。

ヒレから変わった二本足を冷たい海に浸すと、たちまちポケモン達が寄ってきた。


「姫、だから止めたのですよ。人間とポケモンとが深く関わることなど出来ません」


(喋った!?!?)


ネオラントが喋った。
一瞬仰天したが、二言目を聞くとこれは声を当てているだけだと気付いた。裏方にいる人間が、ネオラントの動きに合わせて台詞を当てているのだ。


「それでも、私はあの人の側に行きたかった」


ここで初めて少女が言葉を話した。
観客はサクラビス目線で舞台を観る演出らしい。だからサクラビスもポケモン達も、観客の分かる言葉で話している。


「悪いことは言いません、早くお戻りになってください。明日には本来の姿に戻ってしまいます。もし人間共の前でそうなってしまったら、一体何をされるか…!」
「私は時間が許す限り、あの人の側にいます。ごめんなさい、一人になりたいの」


ぱしゃん、と足で水を波立たせると、ポケモン達は悲しそうに海底へと帰って行った。

300:本番に強いタイプ ▼→←298:珊瑚姫



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (81 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
50人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

こうもり(プロフ) - 時間の止まったリスさん» ご感想ありがとうございます!DPはリメイクもされたのでおすすめです!パートナーとの冒険はすごく楽しいですよー! (2022年4月30日 21時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
時間の止まったリス - これを機にポケモン始めようかな、なんて思いました(めちゃ時代遅れですね)。リスはピカチュウとポッチャマ時代で止まってますので。へへ (2022年4月26日 10時) (レス) id: d39a98933d (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - 緑茶さん» こちらこそコメントありがとうございます!DPいいですよね…!!長いお話を読んでくださっただけでなく感想までいただけてすごく嬉しいです、ありがとうございます! (2020年7月31日 20時) (レス) id: a41badf38a (このIDを非表示/違反報告)
緑茶(プロフ) - たまたま見つけて気付いたら全て読んでいました。DP私も好きなのでとても面白かったです。自分の夢に向かって歩き出す彼らを見ていたら涙が止まりません。素晴らしい物語をありがとうございます! (2020年7月31日 1時) (レス) id: ab02c22683 (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - moekaさん» コメントありがとうございます!最後のページに一覧を載せておきました! (2020年2月22日 6時) (レス) id: a41badf38a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:こうもり | 作成日時:2017年1月1日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。