6.お盆 ページ6
お盆。
約束の、赤葦と図書館で一緒に勉強する日がやってきた。
まずは、10時から体育館で二人で自主練。
今まで自主練を一緒にしたことは何度かあるのに、周りにチームメイトとか木兎たちの姿がないだけで、かなり緊張した。
けど、そんなの最初だけで。集中し始めたらあっという間。黙々と練習を重ねて、びっしょり汗もかいた。
ボール出しを手伝う時、いつも見惚れてしまうのは、赤葦の華麗なトス。
何一つ無駄のない。
それはバレー部からしたら、基礎だとか、アレンジがないとか、私にはわからないけど、そう思われるのかもしれない。
けれど、私は、高校に入学して、木兎と仲良くなって。
度々春高の試合を見させられたけれど、ベストセッターと呼ばれる年上の人たちも、誰にも、鳥肌なんて立たなかった。
そういう人たちは、確かに上手いのだと思う。
でも、赤葦のトスには、彼の血の滲むような努力とか、エースへの信頼とか、色んなものが濃縮されているような気がして。
うちは木兎だけって思われてるみたいだけど、雑誌とかでもそう取り上げられるし。
でも、そんなことないって隣のコートで見てたらわかる。
あんなチーム滅多にいない。自分の活躍以上に木兎に渾身的で。なのに一人一人牙を持つ。
まぁそんな感じで自主練した後、軽食を食べて、着替えて図書館で二人で勉強した。
赤葦はちょこちょこ質問してくることがあったけど、少しヒントを出すだけで回答までたどり着くし、要領も良かった。
教えるときに近づく距離だとか、耳元で小声で聞こえる声だとか、制汗剤の柑橘系のすっきりした匂いとか、全てが私をドキドキさせた。
ちゃんと課題も進めたし、家で勉強なんて殆どしないから、捗りすぎて怖いくらい。
赤葦の前ではできる女でいたかったのかもしれない。
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作者名:...syokatsu... | 作成日時:2022年9月23日 3時