子供42 ページ42
銀ちゃんの前で晋助兄さんの話を出すのには、勇気がいる。
少し前に新八君や神楽ちゃんが言っていたことだ。
彼の話を出せば不機嫌になるどころか、感情がスっと消えるらしい。
つまり、銀ちゃんは晋助兄さんの事をものすごく嫌っている。
攘夷戦争時代、私がよく晋助兄さんにアプローチをされていたのもある。
攘夷浪士となった彼に攫われたことも。
そして、私が彼の事を大好きだということも。
その全て銀ちゃんが晋助兄さんを嫌う材料になるのだろう。
けど私は、そんな彼の目の前で晋助兄さんの話を出すのを躊躇わない。
むしろ積極的に話そうとしている。
けどそれは、私が単に怯えているだけなのかもしれない。
彼を、晋助兄さんを忘れないように、と。
「…あのね、銀ちゃん」
「ん?」
「会いたいんだ、晋助兄さんに」
今私はどんな顔をしているのだろうか。
冷静に言えているのだろうか。
銀ちゃんを見れば、一切反応せずただただ外を眺めている。
片手に持ったココアはまだ一口も飲んでいない。
「必要ねぇだろ」
刺のある声を、久しぶりに聞いた。
結婚してから平和ボケしてたから、甘くて優しい銀ちゃんの声ばかり聞いていたけど。
今の声音は、白夜叉と彼が呼ばれていた時代の雰囲気とよく似ている。
「春も夏も秋も冬も、寺子屋にいた私たちは片時も離れなかった。あの日々は確かにあって、忘れちゃいけない思い出で、戻りたいと願ってもいいようなそんな記憶なんだと思う」
ポツリポツリと話す私に耳を傾ける銀ちゃん。
既に冷めてしまったココアを口に含み、コクリと飲む。
「分かるでしょ?その記憶の一部に晋助兄さんもいたんだよ」
消えそうな声が、私の口からこぼれ落ちた。
ちゃんと届いたかな、銀ちゃんに。
チラッと横目で彼を見ると、虚ろな目で窓縁を見ていた。
沈黙が続き、私はそっとため息をする。
すると、やっと銀ちゃんは口を開いた。
「あいつ、ぜってーAと結婚したかったろーなー」
「…え?」
「ま、今はAの旦那は俺だけど」
そのままココアをグイーッと飲みほし、窓際にカップを置く。
そして、私の頬に手を添えた。
「結婚式には呼んでやってもいいぜ、自慢してぇから」
そっと、彼は近づいてきて。
優しいキスをしてくれた。
唇が離れていくと、やけに冷たい銀ちゃんの瞳とぶつかる。
「この話は終ェな」
頭にポンっと手が置かれた。
やっぱり、彼は晋助兄さんの事を嫌っている。
226人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お茶(プロフ) - アルムさん» 素敵なコメントありがとうございます!!心の支えでございます涙次回作も宜しければ読んでいただけたら光栄です!ありがとうございました!! (2019年11月8日 23時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
アルム(プロフ) - お茶さんこんにちは! 番外編完結おめでとうございます。1シリーズのときからずっと好きで毎日読んでいました。お茶さんの綴る文章、大好きです。毎日お疲れ様です。次回作も楽しみにしています。 (2019年11月8日 23時) (レス) id: 4726a4adc0 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - みゃんさん» わぁぁあコメントありがとうございます!続き頑張って書きあげますね!! (2019年9月4日 0時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
みゃん - 一気に読んじゃいました!めっちゃ面白いです!!続きが早く見たいです! (2019年9月3日 22時) (レス) id: 21dc5ec498 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - あくび少女さん» コメントありがとうございます!ニヤニヤ…( -∀-) (2019年9月1日 1時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月9日 2時