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「なぁいるんだろ、出て来いよ。」
街灯が遠くで輝く景色を見ながら空虚にその声が発せられた
振り返れば、さも当然のように狐十火秀夜が立っていた
金色の艶やかな瞳は歓迎、同情、否定、何を思っているのか微塵も読み取れない
「亞琉斗さん、何を捨てたのですか。」
「捨てた？…腹くくっただけだ。」
教えろよ、命令するかのように見据えられた秀夜は仕方ないといった表情で話し始めた
この世界には【人】【獣】【妖】【魔】の四つの国が存在し、それらは神によって創られ王によって成り立っている
人の王は霜桜フゥリ、つい最近代わった心優しい新しい王、前王は母である霜桜風羅。
獣の王は獅、先祖代々ライオンの獣人によって受け継がれてきた王であり国王。
妖の王は化猫。長年行方不明。
「そして魔の王は悪魔。劣悪の魔王。」
「…妖も魔も行方知らずかよ…」
正しくそこが長い歴史と違う大きな点の一つだった
妖は力が強い為に王の立場を利用して大暴れするケースも少なくは無い、つまりは妖の王はお告げか何か、自覚があった
「恐らく今の妖の王には自覚がありません。」
妖はランダムで王が決まる
しかし今の王には自覚がない、力がない
「殺されやすいっつーことだな。」
「ええ、言うなれば悪い傾向です。」
「随分と長生きなんじゃねーのお前。」
長らくの疑問が解け亞琉斗は少し垢抜けたような顔をしている
「……俺の母は妖ですから。」
浮世離れした容姿で答える秀夜は人でなかった
彼が知っていた、言いきれたのは全てその目で世界を見ていたからだ
王が変わる瞬間を、魔の王が亞琉斗でないことを
「で？魔の王は誰なんだよ。」
街灯に照らされながら一人亞琉斗は帰り道を歩いた
自分は妖と会話をしてたのか、そんなことを思いながら
まぁ一番知りたかったことが知れたのだ、満足である
「魔の王は悪魔。劣悪の魔王、ガルト。」
足元を見ながら人目を避けるように歩いていたのはいつものこと
突然の異変にふっと顔をあげると停電だろうか
街の灯りが全て消え
目の前には人
「……久しぶりだな……」
「あ？誰だテメェ。」
秀夜は亞琉斗がいなくなった平原で灯りが消えた新鮮な街並みを見下ろし、一人呟いている
「魔王ガルト……それは＿＿＿＿＿」
「…！ッがは…ぁ"……！？」
「大きくなったな、亞琉斗。」
「＿＿＿＿亞琉斗さん、貴方のお父様です。」
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作者名：灰猫 | 作成日時：2016年12月7日 5時
