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＊
「はっ、はっ………」
私は走っていた。コーヒーを買うのも忘れて無我夢中に校内を駆け抜けて、屋上に来た。ひゅう、と心地よい風が吹いてる。でも心はざわざわしてる。
と教室にいたらまた黄瀬が来てしまう。今は会いたくなかったからここに来た。黄瀬を避けてた時も来ていた場所。ざわざわした心にはここが1番だ。
"好きな人、いるから"
黄瀬は佐藤さんにそう言っていた。黄瀬には好きな人がいる。あの笑みも真剣な顔も見せる人が居るんだ。そう思うと心がもやついて、沢山の感情が揺れる。
黄瀬は私だけの人じゃない。それをわかってるのに私はなんでこう…………………………
そもそも私の好きと黄瀬の好きは違うのかもしれない。私の感じてるこの"好き"は傍にいて心地いい、それだけのものかもしれない。
じゃあそもそも好きって何？なにをすれば、何を考えれば"好き"になる？嫉妬が好きだからするものだということは桜に聞いてわかってるつもり。
でもその嫉妬は桜にもしてたりしてる。笠松ばっかりだから笠松に喧嘩売ったりだって……………………………
…………………いや、考えるのはよそう。
私が黄瀬を好きなことには変わりないんだ。これは変わらないんだ。………ちゃんと、向き合わなきゃ。そうと決まれば早く教室に戻って＿＿＿＿
〜♪〜♪
｢………？｣
グチャグチャになった思考を止めるかのように着信が鳴った。試合の話がいつくるかわからないからいつも肌身離さず持ち歩いてる携帯からだ。
………八木さんかな………？
ディスクには非通知という文字。あ、嫌な予感…………
ぴ、とボタンを押して電話に出た。
「はい、もしも＿＿【おう！俺様だ！】… ……」
機械越しだというのに大声で話す男の声。不審者ではない。よーーーーく知ってる相手。私はそれを聞いて大きく溜息ついた。
「………なに、また自慢？今学校【俺様はな、さっきまで福島に行ってたんだ！ももがうめぇ！魚もうめぇ！羨ましいか？羨ましいだろ〜？なんたってな…………】……… 」
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作者名：O | 作成日時：2021年10月29日 16時
