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＊
｢…………な、鷹村先輩って美人だよな〜｣
そんなことを思ってると、同級生の話が耳に入る。鷹村センパイ、という言葉に思わず聞き耳が立つ。そう言われた男子生徒は大きく頷いていた。
｢わかる！美人で英語が出来て………ああやって面白いし？｣
｢いやぁ〜でも、渡辺先輩もポイント高いよな｣
｢女子バスケ部の穂高先輩もだろ！………レベル高いよな〜ウチの女子生徒って｣
｢チッチッチ、わかってねーなぁ。鷹村先輩が1番美人でカッコいくて可愛い最強の女王だろ！｣
｢でも、彼氏いそうだよな。男はほっとかねぇだろ………｣
チク、………
胸に少しくらい影が痛みとともに落ちた。
ほかの同級生が朱センパイの話をしていることもそうだけど、"彼氏"という言葉にだ。
勿論、そんなものはいない。居たら多分俺は相手にされないし、そもそも俺の数え切れないほどの告白をスルーしちゃうセンパイが恋愛なんてできないでしょ。
だけど………それを差し引いてもセンパイはモテる見た目をしてる。
俺はセンパイが好きだ。ほかの男に見られたくないし取られたくない。
間違いなく俺がセンパイにとって1番近い存在だと思うけど、少しでも"可能性がある"と思う男子たちに怒りさえ覚えた。
あの人は俺のだ。他の男になんてやらない。絶対、やらな＿＿「あの！」………？
不意に呼ばれた。見ると＿＿＿朱センパイと同じクラスの可愛いカンジの体操着の女子。
｢…………えと、このあと少し時間下さい！じゃ、あとで！｣
「あ、ちょっと！ 」
女子はそう言って勢いよく頭を下げて俺の返答も聞くことなく仲間の元へ走っていった。言い逃げである。………なんて、思いながらも要件はきっと1つ。
赤い頬、合わない視線、熱のこもった声…………
それが俺にどんな要件だかを知らしめている気がして、あと数分で鳴るチャイムが故障でも起こしてくれないかな、なんて馬鹿みたいなことを思った。
＊ ＊ ＊
｢ねぇ、朱ちゃん｣
「ん？何 」
体育のサッカー中、先生にこってり絞られ不貞腐れる朱に桜が駆け寄ってきた。口を尖らせ不満げな朱とは対照ににやけながら桜は私の耳元に唇を寄せて言う。
｢………金魚のフン、活躍してるわよ｣
「な………ッ！」
かぁ、と顔が赤くなる。金魚のフン、というのは隣のコートで同じく体育中の黄瀬のことだ。
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作者名：O | 作成日時：2021年10月29日 16時
