序章�� ページ4
＊
「わぁ、素敵」
辺りを山で囲まれた、自然一色の広々とした場所。
その中にポツンと建つちんまりとした山小屋の横にある小さな駐車場に停車すると、おじさんは真っ先に車を降りる。
それに続いて父さんと母さんも下車すると、シートを倒して時久と初香もぴょんっと着地した。
「やぁ、空気が綺麗だなぁ。なぁ拓海？」
開け放ったドアから、そんな呑気な父さんの声と青い草の香りが流れ込んでくる。
しかし、俺はその場から動くことが出来なかった。
死ぬ。
あれは死ぬ。
高速道路の下は、恐ろしく田舎だった。
俺たちが住んでいるところも都心とは程遠い静かな街だが、ここには静かとかいう以前に何もない。
中心街と思われる建物の集まりには小さなスーパーらしきものを見つけたが、それ以外には目立った看板は見当たらない。
とにかく青々とした田んぼ一色の中に、数十メートル置きに古い民家が数軒。
高い建物が一つも無いせいで、山々を背景に古い電信柱がそびえたつその姿を、俺は「田舎」としか形容できない。
時々擦れ違う車はあるものの、人間がいない。
「お父さん、まだー？」
初香が身を乗り出し、ハンドルを回すおじさんに問いかける。
確かに、「もう着く」と言って高速を下りたおじさんだが、こんなところにキャンプ場などあるものだろうか。
「おう、あと十分くらいだ。危ないから座っとけ」
「え〜、そんなのちょっとじゃないよ」
そう言って渋々引き下がる初香だが、青信号を右折した先にふと見えた看板には、これから行く所のものだと思われるキャンプ場の名前の横に小さく「この先四キロ」書いてあった。
「キャンプかぁ、いやぁ〜時久が生まれてからは言ってなかったからなぁ……久しぶりだなぁ」
そう感慨深そうに呟いたのは、俺の父さん。
良く言えば優しそうな顔、悪く言えばのっぺりした面白みの無い顔に、銀縁の眼鏡をしている。
見た目が草食なら中身も草食で、この中では一番年上――と言うよりかはジジイなのだが、全然そんな感じがしない。
「そっか、女の子二人はキャンプ初めてね！ うちは昔、アウトドア好きでよく行ってたんだけどねぇ。二人目はそんな余裕もなかったから……最後に言ったのは拓海が幼稚園の頃だったと思うわ」
そんな二人の話から、いつもの思い出話が始まる。
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槊鵺(プロフ) - とっても素敵な小説ですね！こんな作品が占ツクに広まってほしいものです。是非参考にさせていただきたいとても良い作品だと思います！お忙しいとは思いますが更新頑張ってください！ (2014年11月20日 17時) (携帯から) (
レス) id: 14b4575316 (このIDを非表示/違反報告)
大気(プロフ) - 桜狼さん» ありがとうございますまじですか！！！！？ まじですか！？ あ、これしばらく捨ててたんですけど今から頑張ります！！ます (2014年9月29日 19時) (レス) id: 077743fc46 (このIDを非表示/違反報告)
桜狼 - 初めまして。初めてこの小説を読みました!!凄い面白いです!!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2014年9月29日 10時) (レス) id: 2d5d273768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：大気 | 作成日時：2014年8月7日 17時
