君の蒼い花。2章=オリジナル=

64話 ページ14

「空から見てたらいいな」
星を指さしながら慶太は言った。
ひどく優しい落ち着く声。
俺がすごく好きだったこの声。

「そうだね」
俺も星を指さした。

ピカピカと光る白い星。
「あれ、友矢だったらいいな」
「そうだね」

その近くにあるオレンジ色の二つの星。
「あの星たち、晴生のご両親だといいな」
「そうだね」

まだ死んだかわかんないけど。
たぶん死んでるけど。
飛行機事故で海に落ちた。
だけど、遺体はあがらなかった。

その傍の小さな小さな星。
「あれ、サラちゃんだといいな」
「そうだね」

サラちゃんか。
天国で元気に遊んでたらいいな。
一生俺のことなんて許してくれなくていい。
俺のせいで。
俺のせいで、元気に生まれてこられたはずの命が
死んでしまったんだ。

また涙が出そうになる。
嫌になる。
自分が嫌いだ。


「晴生、泣くなって」
慶太に頭を抱えこまれる。
ふわりと匂う懐かしい慶太の匂い。

「泣いてねぇよ」
「泣いてる、でしょ？」

俺は手を跳ね除けた。
慶太を睨んで言った。
「もう、嫌なんだよ！
思い出すから、全部忘れたのに。
忘れたいのに！」

早く忘れたかった。
慶太と過ごした中学校時代も。
放課後、慶太の学校の正門で待ってた高校時代も。
大学生の慶太と専門学生の俺がすれ違ったことも。
話し合って和解した時に
食べたショートケーキの味も。
二人で握って泣いたエコー写真の感触も。
サラちゃんがお腹を蹴る感触も。

辛くなるだけだから。

俺の涙を拭きながら
抱きしめてくれる。
優しいんだよな、慶太は。

「だから、もう辛い思いさせたくないんだよ。
晴生がずっと、今も苦しんでるの知ってる。
だからさ、…結婚しようよ、俺たち｣

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