愛神報告書

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この報告書は巫女見習いに配布されるものである。

①愛神とは
豊作や国の防衛などを1000年前から担う神々の総称。
祭りも供物も要求しない代わりに、愛を求めることから愛神と呼ばれている。総じて執着心が強い。

②巫女の役割
愛神に愛を提供する役割を担う者。
友愛、セイ愛、家族愛、など愛神ごとに好む愛の種類も違うため、巫女は複数人存在する。

③巫女の禁則事項
・愛神に望まぬ愛を提供、強要
・愛神の拒絶
・役割の放棄
830年前の火山の大噴火や、480年前の大津波、147前の大飢饉、そして５年前の豪雨は当時の巫女が禁忌行為を行ったために起きた愛神による神罰である。

④今年の巫女枠
3人

次のページから愛神の報告書となる。見習いは、筆記テストまでに全てのページに目を通しておくこと。
最終的には、ある程度の愛神の知識を頭に入れておくこと。

【......このページの下の方に短い走り書きがある。インクは乾き切っており、おそらく前々から書かれていたものだと思われる】

6種類の結果パターン

たまたまこの文をみた見習いさんどうか巫女にはならないで - 2024年4月28日

豊穣神アリアスラ

この国の豊穣を司る男神。
主神アルバとその姉にして妻ラリアーネの最初の子。神として上位にあり、愛を捧げる前は供物を最初に食せる権利を持っていたほど。

【芽吹の始まり】
かつて、人の世界は汚染され、一面焦げて、大地は死に絶えていた。それを哀れに思ったアリアスラは自分の髪を地面に埋めた。髪は、汚染された地面の下で土を食らい、肥えていった。やがて土をたらふく食べた髪は、地面の奥深くまで毛を伸ばした後、地上に芽を出した。
芽は大きく大きく育ち、周辺に花を咲かせた。やがて雲を越えるほど育った髪は、【原初樹】と呼ばれ、この国のシンボルとなった。

【性質】
博愛主義、基本的に何かを嫌う行為はしない。温厚かつ、相手を常に重んじる。愛も平等に振り分けるが、その分、他の愛神よりも愛を求める姿が重く、執着心が特に強い。

【外見】
人間の成人男性に似た姿だが、長い茶髪の髪には様々な花が咲き、時折実が成る。翡翠色の瞳から樹液の涙を流すこともある。(本神曰く、べたべたするからあまり泣かないようにしているとのこと)
前巫女からもらった眼鏡を現在は身につけている。

【眷属】
蚯蚓(ミミズ)

YOUは、暖かな日差しと花の咲き乱れる中庭で、昼食がてら報告書を読んでいた。

『おや、見習いさんだ』

優しげな男性の声に顔を上げると、報告書に書かれていた内容と外見の一致する存在がそこにいた。

驚きすぎて、思わずむせると彼は、『あらら』と心配そうに背中を撫でてきた。

彼は置いてあった水を手に取ると、それを渡してくる。本当に神様なのかと言いたくなるほど優しいのだが。

しかしふと彼の足元を見ると、様々な花が季節関係なく咲き乱れていた。

『大丈夫？』

彼の問いに全力で首を縦に振る。ありがとうございますとお礼を言うと、彼は驚かせてごめんね、と申し訳なさそうな顔をした。

『もうすぐ、新しい巫女さんが来るというから会いにきてみたんだ。お忍びで来てるから内緒だよ？』

イタズラっぽく彼は笑うと、自分の髪からプチリと何かを取った。

赤い実...ライチだろうか？

『よかったらデザートにでも食べてみてごらんよ』

サンドイッチ食べたらいただきます、と言うと彼は嬉しそうに微笑んだ。

『うんうん、じゃあ私は他の子たちにも会ってみたいからもう行くね』

『会える日を楽しみにしてる』

【注意】
彼の体から生成されたものは、絶対に口にしないこと。