心中系浮気症の恋人、予約済です

はじまりはじまり ページ11

蠢く黒いもの。其れは、文字だった。
［中島 敦
能 力 月下獣
白虎に変身することができる。
現在は制御可能。
年 齢 18歳
誕生日 5月5日
身 長 170cm
体 重 55kg
血液型 AB型
好きなもの 茶漬け、猫、カメレオン、横浜
嫌いなもの 自分、昔いた孤児院
思 考 無］
其処で文字が止まった。

四角い枠にそれらが囲まれ、御丁寧に少年に向かって矢印が伸びている。
何此れ。
色のついたテレビみたいな――

此の不気味な現象に、私は只うずくまることしか出来なかった。

「中島、敦…？能力って、何此の文字、え」

――――怖い。


「落ち着くんだ。大丈夫」

ぽん、と肩に手が置かれる。彼だと錯覚して仕舞うような手。
「もう一度彼を見て御覧」
怖々目を開け、白い少年を見る。
「文字が見えるかい？」
文字は消えていた。私は首を横に振る。

「大丈夫？えっと…」
中島敦、らしき少年が心配そうに聞いてくる。そう云えば未だ名前を云って居無かった。
「有難う御座います。…石原、石原Aと申します」

何故だか太宰さんの前で本名を云うのは躊躇われた。

敦さんは太宰さんの方に向き直る。
「太宰さん…若しかして、彼女は」

太宰さんは不敵に笑って、
「…どうだい？先ずは3人で喫茶店でも。善い店を知っているのだよ」
と云った。

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