検索窓
今日:10 hit、昨日:3 hit、合計:76,333 hit

episode.09 ページ10

*


教室に戻ると担任との話は終わったのか
Aが俺を待っていた。


「洋くん!どこ行ってたの?」

「あ、悪い。トイレ行ってた」


お前の友達に別れてくれと言われた、なんて
言えるはずもなく咄嗟に嘘をつく。


「帰るか」


そう言っていつものように差し出した手。

Aは一瞬迷ったようにそれを見つめて
自分の手と重ねた。


「洋くんはもう進学する学校
決まってるんだよね?」

「ん?まぁな。
目ぇかけてくれてる学校があるっていうし」

「洋くん野球上手いもんね!
私も頑張らないと…!」

「あのよ…」


なに?と首を傾げて俺を見上げるAに
俺は口を開きかけて、言葉を呑み込んでしまう。


「やっぱなんでもねぇわ」


なにそれー?と笑うAの横顔に
今でもこんなにドキドキしちまうってのに

『別れよう』

だなんて言葉
俺の口から言えるはずもなかった。



それから数日が経ったある日

図書館で勉強して帰るというAに
他にすることもねぇ俺も一緒に向かっていると


「洋ちゃん!」

慌てた様子で仲間が俺を呼んだ。


「どうした?なんだよ、その傷…」


ショーキチらの顔の傷を見て
少しずつ頭に血が上っていくのを感じる。


「誰にやられた!?」

「親が市議会だかなんだか知らねー奴らに…」

「そいつらがいる所に案内しろ」


頷いて走り出す仲間の後を続こうとすると

「ダメ!!」

Aが後ろから俺の腰に抱きついた。


「洋くん行っちゃダメ!!」

「A、いいから離せ」

「やだ!!だってケンカするんでしょ!?」

「じゃあ、お前は俺に
仲間に手ェ出されたっつーのに
何もすんな、黙ってろって言うのかよ」

「そうじゃなくてっ…」

「違うっつーならなんだよ?
…自分のため、とでも言うのか?」



俺の言葉に
Aは目を見開き固まってしまう。



「俺がケンカさえしなけりゃ、真面目だったら
別れろだなんて先生からも言われねぇもんな」


Aの友達に言われて
あれからすげぇ悩んでたっつーのに。


「自分のために仲間見捨てろって?」


バカみてぇじゃねーか。


「そういう奴だったとは思わなかったよ」


そう吐き捨てたとほぼ同時に
パチンと乾いた音が耳に響いた。


そしてAは俺の頬を打った手を
もう片方の手で握って、俺を睨む。

その瞳には大きな粒が浮かんでいた。


「もう知らない!!」


初めて見たAの涙に
打たれた頬より胸に鋭い痛みを感じた時には
もうAの姿はなかった。

episode.10→←episode.08



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (194 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
197人がお気に入り
設定タグ:ダイヤのA , 倉持洋一   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

杏津(プロフ) - ひよ丸さん» そう言ってもらえると嬉しいです!ありがとうございます(^-^) (2016年2月22日 21時) (レス) id: 9273c5e1f7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ丸 - 泣けました。 (2016年2月22日 20時) (レス) id: 96033a15a3 (このIDを非表示/違反報告)
杏津(プロフ) - ちーさん» ありがとうございます(o^^o) キャラ崩壊が心配だったのですが、そう言って貰えるとホッとしました。これからもギャップを大切に頑張ります!! (2016年1月20日 21時) (レス) id: 9273c5e1f7 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - 完結おめでとうございます!倉持のギャップ萌えは他にないと思っております。チーター様の素晴らしさ流石です!これからも頑張ってくださいね! (2016年1月20日 21時) (レス) id: c2aadded24 (このIDを非表示/違反報告)
杏津(プロフ) - 乃野七さん» 最後までありがとうございました!またもっちーのお話書きたいと思っておりますので、これからもご意見、ご感想等よろしくお願いします(*´∀`*) (2016年1月20日 17時) (レス) id: 9273c5e1f7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あんず | 作成日時:2016年1月5日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。