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episode.07 ページ8

*


練習を終えショーキチたちが部室から出て行くと
壁の掲示板に【禁煙】とだけ
目立つように大きく書いた紙を貼り付け部室を出る。



「!…A」


制服に着替えて
カバンを抱えて座り込んでいたAは
俺の姿を見ると立ち上がり
ゆっくり俺の目の前まで来た。

だけど、何か言おうとして口を開けるが
結局、口を閉ざし唇を噛んでしまう。


「…帰るか」


そう言って、いつものように手を差し出せば
Aは目を見開くと
頷いてから俺の手を握った。


「あの、洋くん…」

「謝らなくていいからな」


足を止めて半歩後ろを歩くAに振り向く。

Aは、え?
という顔をして俺を見上げていた。


「それより腹減った。
肉まん食いたいんだけど、Aは?」

「…私も」

「じゃ、買ってくる」


そこで待ってろと小さな公園のベンチを指して
Aの手を離しコンビニに行こうと俺に
「ごめん」と小さな声が背中から聞こえた気がした。



肉まんの入った袋をカサカサ鳴らし
Aの待っているベンチまで駆け足で行く。


「あんまんと肉まん、どっちがいい?」

「じゃあ、あんまんで!」


俺の前に並んでたお客に
3つあった肉まんのうち2つを先に注文され
仕方ねぇと代わりに買ったあんまんを取り出す。


「ありがとう」

とAは小さく微笑んでそれを受け取った。

Aの隣に腰をおろし肉まんを食べる。


「んまっ」

「あんまんも美味しいよ」


「一口くれ」と俺が言う前に
Aがあんまんを差し出してくれて
それにかぶりつくと
今度は俺が肉まんをAに差し出し
Aがそれを食べる。

たったそれだけで
Aが俺を理解してくれているようで
照れくさいほど、すげぇ嬉しかった。



「洋くんは、高校でも野球続けるよね?」

「おー。甲子園、行きてぇからな」

「私も!洋くんが甲子園のグラウンドを
風のように駆けて盗塁決めてるの、見たい」


そう言いながら、どこか遠くを見るように
もう陽が落ちてしまった空を見上げる。

その横顔が、寂しげに見えたと思ったら
俺はAに手を伸ばし
そのまま自分の方へ引き寄せた。


「よ、洋くん…?」

「わっ…悪ぃ…!」


慌てて離れようとすれば
Aの手が背中に回り、ぎゅっと俺に抱きつく。


「私、野球やってる洋くんが大好きだよ」

「!…おー」

「だから、どんなことがあっても
絶対、野球だけはやめないでね」

「やめねぇよ」


そして、潰れない程度にAを抱きしめ返した。

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設定タグ:ダイヤのA , 倉持洋一   
作品ジャンル:恋愛
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杏津(プロフ) - ひよ丸さん» そう言ってもらえると嬉しいです!ありがとうございます(^-^) (2016年2月22日 21時) (レス) id: 9273c5e1f7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ丸 - 泣けました。 (2016年2月22日 20時) (レス) id: 96033a15a3 (このIDを非表示/違反報告)
杏津(プロフ) - ちーさん» ありがとうございます(o^^o) キャラ崩壊が心配だったのですが、そう言って貰えるとホッとしました。これからもギャップを大切に頑張ります!! (2016年1月20日 21時) (レス) id: 9273c5e1f7 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - 完結おめでとうございます!倉持のギャップ萌えは他にないと思っております。チーター様の素晴らしさ流石です!これからも頑張ってくださいね! (2016年1月20日 21時) (レス) id: c2aadded24 (このIDを非表示/違反報告)
杏津(プロフ) - 乃野七さん» 最後までありがとうございました!またもっちーのお話書きたいと思っておりますので、これからもご意見、ご感想等よろしくお願いします(*´∀`*) (2016年1月20日 17時) (レス) id: 9273c5e1f7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作成日時:2016年1月5日 18時

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