キミの一番近くで【御幸一也】 (ページ17)

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練習が終わり
ノックで使ったボール籠を運んでいると

河合さんが友だちに背中を押され
御幸くんに話しかけているのが見えた

あんなに顔を真っ赤にしてたら
さすがに好意を寄せてることに気付くよね、御幸くん

「深沢ー、お前いいのかよ？」

不意に肩に手を置かれビクッと体が震えてしまった

「倉持くん！…いいって、なにが？」

「ヒャハハッ！なにがじゃねーよ。
んな不貞腐れた顔してとぼけんのかよ？」

倉持くんは笑って
私の頬を軽く摘んで遊び始める

とぼけてるつもりはないんだけど…。
私、不貞腐れてたの？

「お前さー、隠してるつもりだろうけど
よく顔に出てるからな？」

「ひょーらの(そーなの)？！」

鳴ちゃんにもそんなこと言われたことなかったから
驚かずにはいられなかった

「おいおい、あんまりAちゃんいじめんなよ？」

さっきまで河合さんに話し掛けられていたはずの御幸くんがいつの間にか戻ってきて

「別に、いじめてねーよ」

倉持くんはパッと私の頬から手を離した

御幸くんは持っていたボール籠を私から奪うと
そのまま倉庫に運んでいく

「ごめん。ありがとう…」

私は慌てて御幸くん追いかけ
ボール籠をしまう彼の背中にお礼を言う

「どういたしまして！」

振り返った御幸くんはニッと笑ってくれた

「…あのっ、御幸くん！」

「ん？」

「……昨日、河合さんにメールしたの？」

やっぱり聞かずにはいられなくなって
私は直球に尋ねる

すると

「うん。したけど？」

「え？」

なんともアッサリした返事に
思わず聞き返してしまった

「ついでに、告白もされた」

こ、告白！？

「なんで…？！」

思いもしなかった言葉に
思考が置いていかれそうになる

告白はまだしないって言ってたのに。

「なんでって…俺のこと好きだからだろ？」

「そう、だけど…」

御幸くんの目を見れなくて少し俯いてしまう

「…やっぱ、Aちゃんは知ってたんだ？
河合が俺のこと好きだってこと」

「え、まぁ…聞く前に言われちゃったから」

「つーことはさ。知ってて、Aちゃんは俺に河合さんのアドレス渡したってこと？」

御幸くんの言葉に、私は小さく頷いた

「…そっか。
Aちゃんは河合さんの背中を押したんだ…」

御幸くんが何か呟いたかと思って
顔を上げると同時に
御幸くんは私を見ることもなく私の横を通り過ぎ

そのままグラウンドを出て行ってしまった