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「ふーん。なるほどねー…」
話を聞いた亮介さんはそう言って
フッと笑った
「ここまできて鈍い深沢相手に、御幸も振り回されちゃってさ。こういうことにはヘタレだね」
「鈍い??
亮介さん、それどういう意味ですか?」
「そのまんまの意味なんだけど?
俺が言えるのはここまでだよ。
言っちゃうとつまらないし」
なんて言われてしまって
亮介さん、絶対楽しんでると思いつつ
もしかして、御幸くんが私のことを…?
そんな考えが頭に浮かんだけど
まさかね?と無理やり掻き消した
亮介さんはそれ以上、本当に教えてくれなくて
その後は散々ネットティーに付き合わされた
「ふぁーあ…」
「でけぇ欠伸だな…。拳1個入るんじゃね?」
翌朝、ジャージに着替えてドリンクを作り
せっせと運んでる私の横を過ぎる際に
半ば呆れ顔の純さんに言われてしまった
「寝不足か?くまが出来てるぞ」
純さんの後につづいて哲さんにまで指摘され
慌てて顔を逸らした
「お見苦しい顔を晒してしまいスミマセン」
「そーいや、アイツも寝不足だとか言ってたな」
「…“ アイツ ” …ですか?」
「ああ。アイツだ」
哲さんは倉持くんにど突かれてる御幸くんを指す
御幸くん、河合さんにメールしたのかな…?
聞きたいけど、聞きたくない
2つの思いが交錯して余計にモヤモヤしてきた
「どーせDVDでも観てたんだろ。
関東大会前だっつーのに御幸もテメェもたるんでんじゃねーか?シャキッとしろ!!」
バシッと純さんに喝を入れられ
背中がジンジンしたけど、お陰で目が覚めた
グラウンドでシートバッティングが始まる中
私は春乃ちゃんと一緒にボール磨きをしていると
「あ!御幸くん居たよ!」
「どこどこ!?」
「ほら、あそこ!」
声が聞こえてきて
そちらに視線を移すと河合さんを含めた昨日のクラスメイト3人が「カッコいい」と騒いでいた
御幸くんがカッコいいのは誰だって知ってる
もっと他に言葉はないのか
野球の知識もほとんどない人に
御幸くんの本当の凄さなんてわからないだろう
なんて御幸くんを眺める河合さんたちに苛立ちながら
なんとも醜く意味不明で皆無な見栄を張ってる自分にも腹が立つ
「春乃ちゃん、私ちょっとお手洗い行ってくる!」
「あ、はい!」
私はまだ磨き終えてないボールを置いて
トイレではなく、水浴び場へ直行し
思いっきり、冷たい水を顔に掛けて
ペチッと頬を両手で叩いた
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作者名:あんず | 作成日時:2015年3月29日 2時