天才捕手の恋人【御幸一也】 (ページ39)

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電話だと…〈172〉ページ39

Aside

A「ーーーじゃあ、次の神宮大会には…」

御『さすがに出れねぇな』

電話の向こうで一也くんが苦笑する

球場を出てそのまま新幹線で家に帰った私は
一也くんに電話で診断結果を聞いている

肋骨にひびが入っていたらしく(ほぼ骨折)
３週間バストバンドで固定して安静、部活禁止

普通に練習に参加できるようになるのは怪我の治りにもよるけどさらに１ヶ月は掛かるらしい

A「そーですよね…」

御『まぁ、選抜には完治してるし、大丈夫。』

A「……あの、監督はどうなるんですか？」

御『明日みんなで止めるつもり。監督、自分の中ではもう辞めるって堅く決意してるっぽいんだよ……礼ちゃんが言ってた』

A「監督には辞めてほしくないです！」

私に甲子園へのチャンスをくれた監督。
私からしてみれば恩人であり恩師だから

御『俺も。落合コーチもまぁ悪い人じゃねーんだけどな……』

A「軍曹でしたっけ？」

御『あぁ。沢村しか呼んでねぇけどww』

沢村くんが落合コーチを軍曹と呼んでいたのを聞いたとき、すごくピッタリだと思った

御『……はぁ。せめて、試合前に少しでも直接お前と話したかったな…』

一也くんは呟くように言った

A「すみません。お墓参り行ってまして…」

御『俺が今日の午前中に行けって言ったから自業自得なんだけど……。次、いつ会えるかな…』

そう言う一也くんはなんだか乙女みたいで思わず笑ってしまった

御『何笑ってんだよ？』

A「いえ、なんでもないですww
近いうちに、また会えるといいですね」

御『ん……今すぐにでも会いてぇな……。そんで、お前に触れてキスしたい。昨日だけじゃ足んねぇし。Aもそう思うだろ？』

意地悪に尋ねる一也くん
その表情が目に浮かぶ

A「…はい……///」

御『ははっ！電話だと素直だよな、Aって』

一也くんを目の前にして素直になれる方がすごいと思う

付き合って５ヶ月になるのに未だに慣れない

二人きりのときだけに見せてくれる色気のある瞳で見つめられることに……

思い出しただけでも顔から火が出そうだ

御『あ、もうこんな時間か……。悪ぃな疲れてんのに電話引っ張って』

A「いえ、一也くんの方こそ疲れてますよね。……絶対安静ですよ！！」

御『はいはいww じゃ、おやすみ』

A「おやすみなさい」

電話を切ってベッドに寝転がる

……一也くんとまた野球がしたいな…

私はそっと瞼を閉じた