先輩と後輩〈165〉 ページ32
Aside
A「……」
黙り込む私に成宮くんは尋ねる
成「A、怒ってる？」
A「そういう成宮くんもじゃないですか？」
成「まぁね。気分悪ぃわ…」
どうやら、成宮くんも私と同じ気持ちのようで
これ以上は何も言わなかった
すると
「多田野センパイ！お久しぶりです」
多田野くんの後輩らしき長身の男の子がやって来た
多「また背ぇ伸びたか晋二！」
さっきまで先輩たち(特に成宮くん)に弄られる後輩姿しか見てなかった多田野くんが後輩の前だと良き先輩に見える
多田野くんと少し話した “ 晋二 ” くんは
今度は成宮くんの方へ向く
「夏の甲子園観てました、成宮さん。
尊敬する投手と早く一緒にプレーしてみたいです」
成「……なかなか礼儀正しい少年だな」
「ありがとうございます！！」
成「名前は？」
「赤松晋二です！……あの、そちらの方は彼女さんですか？やっぱり成宮さんの彼女となると可愛いですね！！」
赤松くんは私に視線を移して微笑んだ
成「でしょ？」
何故かドヤ顔を浮かばせる成宮くん
A「彼女じゃないです」
ピシャリと言い切る私に、赤松くんは「そーなんですか？」と首を傾げた
なんだか否定するのも疲れてくる…
かといって何も言わなかったら勘違いされちゃうから違うとはっきり言うしかないんだけど…
４回裏、先頭バッターは４番の轟くん
轟くんが打席に立つと球場にワァーっと歓声が上がった
観客の轟くんへの期待値はかなり高いらしい。
あの夏の予選でかなり目立ったからなぁ…
バッターが轟くんだけに、川上先輩の投球に力みがある
轟くんと勝負したことないけど
外野で守ってるだけでも緊張したから
マウンドで彼と向き合うことを考えるとちょっと怖く感じる
カウント２ー１、勝負のところで
川上先輩から放たれたボールはコースも高さも一也くんから要求されたところでない
轟くんがそれを見逃すはずもなく
ボールをレフトスタンドへ運んだ
多「レフトへライナーで…これが轟くんの……」
成「騒ぐな。今のは失投だろ」
川上先輩……
シンカーを投げようとして変化しなかったんだ
次のバッターは５番の真田さん
またまた警戒しないといけない好打者…
１打席目も初球から変化球を狙って打ってたし
投手としてだけでなく打者としても有能だなんて
なんか妬ける……！！
二人目の打者、真田さんにはセンター前へ打たれてしまう川上先輩
前回のコントロールとは全然違う…
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作者名：あんず
| 作成日時：2014年6月19日 16時
