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 本庄宿を出、一同が中山道を歩いている途中のこと。
 一人の青年が、傷だらけでぶっ倒れていた。
 夕暮れ時である。
 鳥がその青年の近くを、残飯を狙うがごとく群がっている。

 困った人を見捨てておけぬ性分の近藤は、その青年を助けようとした。
 だが、近藤よりも先にその青年に近寄った者がいる。
 何と、芹沢鴨だった。

 芹沢は青年に近づいた。
 ざくり、ざくりという足音に、鳥が一斉に飛び立つ。
 
 「おい、野良犬。俺の声が聞こえているなら返事をしろ」

 芹沢の言葉に答えるように、青年は僅かな呻き声を漏らす。

 「話すことは出来ぬでも、頷くぐらいは出来るだろう」

 芹沢はそう云うと、青年の髪を掴んで顔を上げさせた。
 青年は、細く開いた眼で芹沢を見返した。

 「お前にひとつ、質問してやる。……生きたいか」

 青年の喉の奥から漏れた息が、声帯を震わせる。

 「もし、生きたいのなら」と芹沢は懐を探り、握り飯を取り出した。
 それを見た青年の表情が少し変わった。

 「この握り飯を取れ」

 青年は握り飯に手を伸ばした。
 だがその握り飯は芹沢の手を離れ、道に転がる。

 「おっと、すまんすまん。手を滑らせてしまった」

 軽口を叩く芹沢をよそに、青年は地に這いつくばったまま、握り飯に手を伸ばし続ける。

 「見栄や誇りよりも、生きることを選ぶか。……飢えた野良犬そのものだな」

 芹沢の嘲笑に、今回は腹を立てたらしい。
 青年は芹沢をねめつけた。

 「どうせ放っておけば早晩くたばる身だ。行く先もないようだな。我々について来い。餌ぐらいは恵んでやるぞ」

 「……うるさい」

 その時初めて、青年がまともな言葉を発した。

 「馬鹿にすんなぁ……!」

 そう云って芹沢に飛びかかっていったものの、腹に一撃を食らい、あっさりと地面に叩きつけられる。
 完全に力尽きた青年を、芹沢は文字通り拾い、別の者に運ばせ、それからほくそ笑んだ。

 「……面白いものを拾った。京に着いても、退屈せずに済みそうだな」

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Chris(プロフ) - ファーストMeさん» わーいありがとうございます! こっちの作品も神様ネタありますから、待ってて下さい! (。>ω<。)ノ (2017年6月15日 13時) (レス) id: c0c9efb09c (このIDを非表示/違反報告)
ファーストMe - “刀と共に生きてきました”から来ました!この作品も凄く良かったです!!更新待ってます!! (2017年6月15日 13時) (レス) id: d48a818a0f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Chris | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/  
作成日時:2017年5月23日 0時

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