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 土方は、改めてその男を見た。

 芹沢鴨は、著名な剣客である。
 神道無念流の使い手で、かつては常州潮来(いたこ)の潮来館に屯集していた狂信的な水戸攘夷党の間で鳴らした男だった。
 その集団を天狗党と云ったのだが、芹沢はその生き残りなのである。
 人を大根のように斬るというので、土方もその名は聞き覚えていた。

 「あれが、芹沢鴨なのか」

 「恐らくそうだろう。だがな、トシ」

 近藤は、土方の袖を引いた。

 「あまり見ない方が良い」

 土方は黙って頷き、それから折詰に眼をおとした。

 「この焼き魚、ちょっと変な匂いがするな」

 そう呟いたのは、原田左之助である。
 彼は、魚の美味い伊予松山を脱藩した身である。
 郷愁があるのだろう。

 藤堂平助は、折詰をつつき過ぎて、煮しめが見るも無残なことになっていた。
 何故そんなことをしているのか聞く者は、たれもいなかった。

 顔合わせから四日後の文久三年二月八日、新徴組隊士二百三十四名は板橋宿を京へ向けて出発した。
 隊は一番隊から七番隊まであり、それぞれ伍長という名で隊長が決められた。
 人選は、例の浪人取締役の重役と、清川による。
 一番隊長の根岸友山を初め、いずれも江戸府内で名の知れた浪人たちばかり。
 もっとも五番隊長は、博徒あがりだったが。

 芹沢は、各隊とは離れ、取締付筆頭だった。
 これは各隊長と同格の役で、場合によってはそれより押しも無理も利いたから、彼からすれば先ず満足すべき地位だったであろう。

 博徒あがりでさえ隊長になっているのに、惨めなのは近藤系の八人だった。
 彼らはいずれも平隊士だった。
 剣の実力からゆけば、隊中のたれと立ち会ってひけを取りはしなかったろう。
 だが、たれもその実力を知らなかった。
 無名とは、このようなところで害が大きい。
 近藤ら八人は、六番隊の平隊士として、道中を進んでいった。

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Chris(プロフ) - ファーストMeさん» わーいありがとうございます! こっちの作品も神様ネタありますから、待ってて下さい! (。>ω<。)ノ (2017年6月15日 13時) (レス) id: c0c9efb09c (このIDを非表示/違反報告)
ファーストMe - “刀と共に生きてきました”から来ました!この作品も凄く良かったです!!更新待ってます!! (2017年6月15日 13時) (レス) id: d48a818a0f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Chris | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/  
作成日時:2017年5月23日 0時

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