【男主】飼い慣らされた蛇【七種茨】

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｢へぇ、ここに個室なんてあったんですか｣

｢個室あるのはここのレストランだけなんだけどね｣

｢…随分と詳しいんですね？｣

｢何度か来てるから……あ、仕事でだけど｣



自分から聞いたくせに興味がなさそうにふぅん、とだけ言い、店内を見渡している。

…流石に個室までは大丈夫でしょ
多少値は張るが、番組持ちだし好き勝手させてもらおう。

ロケ中とはいえ、茨が大きめの声で話せば男性ということがバレかねない。
人が多いレストランでそれは少し控えたいところ。



｢簡単に食べて早めに出ようか、これロケ終わるまで気張るのは疲れるねぇ…｣

｢ライブなどとはまた違う見られ方ですからね｣

｢確かにね、でもこうして茨と2人でご飯食べれるのは結構嬉しいかも｣

｢以前も行ったじゃないですか｣

｢もうだいぶ前の話じゃん？｣



以前。キス事件の時のことだ。
茨も思い出したのかほんのり赤くなっている。



｢…また奢ってください｣

｢素直じゃないね？一緒に行きたいんでしょ｣

｢だからそう言ってるじゃないですか｣

｢あはは、怒んないでよ〜短気？戦場なら死ぬよ？｣

｢貴方の煽り久々に聞きましたよ｣



女装も相まって可愛さが増し増し。
ちょっかいもかけたくなるって。

表面上はニコニコと微笑ましく見ているだけだが、内心抑えるので必死なんだし勘弁して


互いに比較的すぐ食べれそうなものを選び、自分が注文をする。


傍から見ればただのカップルとかなのかなと思ってしまう。
けど茨には普通の家庭を持って普通の幸せを歩んでほしい、だからこの気持ちは墓場まで持っていかなければならない。


もう離れないように傍で見ていることが出来るだけで十分なはずなのに、
求めるほどに苦しく、辛くなる。



｢どうしたんです？さっきから百面相して｣

｢…いやぁ、自宅の窓の鍵閉めたっけなぁって｣

｢空き巣入られててもすぐ倒せるでしょう？｣

｢金銭的な面が不安なんだけど…｣



ケラケラと楽しそうに笑う、
…あぁ、また。
茨が楽しいのは嬉しいことなのにちくりと胸が痛んだ。

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