口約束は嫌いだけど ページ20
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「茨、話があります。」
「その言い方は嫌な予感しかしませんね」
「そんなことは」
「目泳いでますが大丈夫そうですか」
ジュンにご馳走してもらった後副所長室へ戻ってきた。
茨にとって嫌な話ならいいな、と思ってしまう。
だって今から言うことは私からしても嫌な事だから。
小1時間前まで寝ていた副所長室のソファに腰をかけると目の前に茨が座った。
ばっちり、透き通った青色と目が合う。
「自分から話をしても?」
「どうぞ」
「先程殿下よりお話をいただきました。」
「日和お兄様から?」
「はい。貴方あと約5年で巴ではなくなるそうです。」
突然の告白に雷が落ちたような衝撃を受けた。
巴ではなくなるって、どういうことだろうか
「…と言っても、それはAのお見合いがあるからだそうで。」
「お見合い?どうしてです、」
「Aには出会いがないから、と将来を心配した殿下のお父上が提案したそうです。これは自分の口から言ってほしいとの事でしたので殿下からのお伝えでなく申し訳ありません。」
「……いえ、ただ急すぎる話で少しついていけません、」
「そうですよね。なので、Aからの話を遮る形で申し訳ありませんが__」
茨は立ち上がり自分の前に移動した。
目線を合わせるように立膝になり、優しい目と目が合う。
少し緊張した空気の中、またぽつりと茨が口を開いた。
「…Aにお見合いなんてものはさせたくありませんので、自分と結婚を前提にお付き合いしてくださいませんか?」
「え、私と、?」
「はい。底辺にいた自分が目指していたものは一つ、頂点に立つことでした。ですがその中で誰かを幸せにしたい、共に生きたいと感じたのは後にも先にもAだけです。」
「私、迷惑かけたくないから、茨とは無理だと思って、付き合わない選択をしようと思ってたんです、なのに」
「…その条件を呑むには、Aへの感情を知る前の俺を返してくれたらいいでしょう」
「あは、無理じゃないですか」
「無理ってことです。俺と共に生きてくれますか」
茨の目に映る自分は、顔がぐちゃぐちゃになるくらい泣いているのに幸せそうで
茨もまた綺麗な瞳を潤ませながら私の手を握った。
「っもちろんです」
ふは、と笑う茨の顔がシャッターを切るように脳裏に焼き付いた。
その茨の頬を一筋の涙が伝った。
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作者名:はなちゃ | 作成日時:2022年10月12日 18時