LOVE ME LOVE ME

▽ ページ31

・

｢何それ。サイッテーだな。｣

｢アヤもそう思うでしょ！？
あいつほんっと最低！ほんっとムカつく！｣



地面にドサっと置いた靴の山。


5段ずつ積み上げた箱を両手に抱えてたら

こんなの日常茶飯事なのに
腹が立ってるせいで、手元が狂ったらしい。



｢ちゃうやん。Aちゃんのことやん。｣

｢は？ハルちゃん、今の私の聞き間違いよね？｣



よいしょっとしゃがみ込むと
1番上の箱を開けながら、隣を見上げた。


丁寧に取り出した新作は
アンクルフリンジのストラップサンダル。

次々に入荷する商品は、もう夏に向けている。



｢彼女が居ない時の暇潰し？
ユンちゃんが聞いたら姉の口にボンド詰めるね。｣



それを聞いて、両手で口元を守った。

腕を組むアヤの目が、冷たく私を見下ろしていたから。



｢その暇潰しに友達の姉を使うな？
らしいでミノ。ユニ坊にボンド頼んどいて。｣



それを聞いて
カウンターで検品中の後輩に首を振る。

仁王立ちするハルちゃんの顔も、マジだったから。




お天気も良い日曜の午後。

会社勤めのふたりは、滅多なことさえなければカレンダー通り、週末は稼働しない。


休日を楽しむ大好きな私の友達たちは
空いてる時間を選んで、お店に来てくれたけど

こんなことになるんなら混んでた方が...

会えるのは嬉しいんだけど、私の予想と違う...




｢彼氏ごっこはないやろ。
Aちゃん、それはあかんやつやで。｣

｢フニくん可哀想...。
今夜あたり励ます会する？当然Aは抜きね。｣




マジギレの時しか聞かないハルちゃんの方言。

私だけ仲間外れにしようとするアヤの冷めた声。

どっちもユンからの噂でしか知らなくて
両方体験済みの弟に、初めて心から同情をした。


居ても立っても居心地が悪くなった私は
それに対する耐性も、免疫も持ってないから

どうしたらいいのかわからず
年甲斐にもなく、大人気(おとなげ)も無くぶつぶつ文句ばかり。

何もかもあのジャガイモの所為にしてしまえば
少しは気が晴れると思ったんだ。




だって、こういうの慣れてないんだもん。


おんなじようにからかってても

最後はいつも必ず、絶対的味方だったから。





" わかったよ、Aヌナ。

じゃーもうやめるね、彼氏ごっこ。 ”



そう言われて、もう5日が経つ。

その間に雨が降った。風の強い日もあった。


満開だった桜も散ったのに

フニからのメッセージはひとつも来てない。

▽→←11：A bit stupid nuna

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す