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219 愛 ページ44

おなじみの屋敷に帰れば、パッと一人の女性が振り返った。
どうやら表情から察するにAを待ち構えていた様だった。

「Aさん、随分遅い帰りですね。」
「すみませんナルシッサさん。
ちょっと知り合いと会っていましたから。」
「慰者の方?」
「ええお世話になった上司でして、私の身を案じてくれて色々と助言を下さっていたので。
ご心配をおかけしたようで、本当にすみません。」
「そう、気持ちは分かるけど、つわりがようやくひいたのだから、此処に座って、暖かくしていて安静に頂戴ね。」
「はいお義母様。」

にこっと人のいい笑顔を浮かべたナルシッサはAの元にかがみ込み、膨らんだお腹を愛おしそうに撫でている。

「あら、お腹を蹴ってるわ。」
「きっとお義母様だって分かって、喜んでるんですわ。」
「ふふんそうね。きっとそうだわ。」


そう呟いたナルシッサは、ふんふんと嬉しそうに鼻歌をならして立ち去って行く。
その背中を見つめてAはホッと息をついた。
以前はぎこちない空気もあったが今ではそんなものはなくなり、何よりA自身がドラコの両親の扱いになれたと言うのが大きな要因だった。


すると今度は目の前に上背の大きい男が現れた。
灰色の目はAの目を捕え、低い声を発する。


「ようやく帰ったか、」
「はいお帰りなさいませ、お義父様。」


Aはサッと椅子の前から立とうとするが、そのままでいいと言われ、椅子に逆戻りするA。
コートを屋敷しもべ妖精に仕舞わせ、ルシウスはAの目の前の席に腰掛けた。


「で、どうかね子供の様子は。」
「はいとても順調ですわ、つわりも終わりましたし、後は無理せずにいることです。」
「まあ、聖マンゴの慰者が言うのだからそうなのだろうな。」
「ええ是非信頼して下さい。」


Aのボケにふっと笑ったルシウスは、おずおずとAの膨らんだお腹に手を伸ばし、ナルシッサ同様愛おしそうな目で撫でる。

「…蹴って来ないが、私だと分からないのか?」
「さあどうでしょうか。
過敏に反応するときもありますけど、そうでない時も。
ひょっとしたらお義父さんを蹴る事が出来ないのでは?」
「ふふっそれは将来有望な魔法使いだな。」
「ええ、ドラコの子供ですもの、」
「君の子供でもある。
身体を大事にしなさい。」
「…___はい、」


まさかここで気遣いの言葉が出るとは思わずA、そしてフッと笑ってルシウスは立ち去った。

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ゆう - こんなに引き込まれたのは初めてです。内容も構成も素晴らしい小説でした。主人公とドラコのむず痒いようで愛おしい関係に心が温まりました。本当に面白かったです。あなたの物語を読めたことに感激しています。素敵な話をありがとうございました。 (2020年11月20日 23時) (レス) id: ba6b4fdba7 (このIDを非表示/違反報告)
- とても読み応えのある作品で、完結まで休みなしで読み終えてしまいました。物語が進んでいく中で、主人公とドラコの関係性が少しずつ変わり、謎も解明されていき、終始どきどきがとまりませんでした。私の拙い言葉では言い表せないくらい、本当にすてきな物語でした。 (2020年10月25日 4時) (レス) id: f5af52d735 (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - ナナナさん» 深夜ですか?!ありがとうございます!そこまで言ってもらえるととても嬉しいです(^^)本当にありがとうございます。 (2018年12月5日 7時) (レス) id: 0af6fdad08 (このIDを非表示/違反報告)
ナナナ - 読み始めたら止まらんくて気付いたら夜中の3時まわってた!とても引き込まれました〜とても面白かったです (2018年12月5日 3時) (レス) id: f9de44e996 (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - 水素ちゃんさん» こちらこそありがとうございます。始めて書いたハリポタ作品なだけあって、至らぬ点があったにではないかと何度も読み返したあの頃が懐かしいです^ - ^そんな経緯もあってか、真摯なご感想に感激しました。こちらこそ貴方様の様に素敵な読者様に出会えて光栄です。 (2018年6月16日 18時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサノ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年9月21日 23時

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