179 秘宝 独りの夜 ページ4
ドラコ・マルフォイは一人、ソファに横たわるAの顔を見つめていた。
Aがホグワーツを立ち去った後、死喰い人の一人から、信じられない報告を受けた時は心底驚き、同時に彼女の無事を願う以外方法がなかったドラコ。
でも同時に今まで不思議に思っていたことが、ガラガラッと崩れ落ちた気分だった。
A・マロニエの本名は、A・クラシス・マロニエであり、あの闇祓いの末子である。
「A、」
ばさっと無造作に靡いている髪を手繰り寄せては弄び、クルクルと指に絡まったと思えば、するりと抜けていく。
あどけない寝顔からは、普段の凛々しい横顔なんて微塵も想像できなほど、穏やかで優しそうだった。
「(クラシス…か。)」
この名前自体信じられないのに、まさか好きな人がそう名乗っていたとは、ドラコはまだ信じられない思いだった。
けれど連れてきてしまったのはほとんど衝動に近く、説明のしようがなかった。
「(そもそも、あの手紙さえ来なければ、こんな事には、)」
送り主不明の手紙を持った大鷲が、ドラコの元に来たのは今朝の話だった。
手紙には、Aがホグミードのホッグズ・ヘッドにAがいるといった内容。
半信半疑で来てみれば、探していた人がそこに横たわっていて、しかも寝ていたなんて誰も想像できなかっただろう。
ドラコは訝しんだが、Aを連れ去り、取り敢えずこの「必要の部屋」に寝かせたと言うのがこれまで経緯だった。
「(そもそもあの大鷲は一体…)」
ドラコがじいっとAの寝顔を見つめながら、一人考え事に耽っていた。
「、ん」
くるんと寝返りを打ったAは、僅かに瞼を開けた。
「ド、ラコ…？」
寝ぼけているのか、はっきりしない口ぶりのAはドラコの名前を呼び、どうして、と口だけが動く。
「まだ寝てろ、」
記憶より痩せ、頬の傷や痛んだ髪を見つめ、穏やかでない日々を送っていたのは火を見るより明らかだった。
落ち着かせるようにそっとAの額に手を当て、落ち着かせるように耳元で囁くと、
「うん…」
と弱々しい声が返って来て再び瞼が閉じた。
閉じてしまった灰色の目が少し寂しかったが、逢えた事の方がずっと嬉しかったドラコ。
閉じた瞼の上に一つキスを落とし、自分のローブをAに掛けて足音を立てずにゆっくりと立ち去った。
朝日がゆっくりと登ってくる、
決戦の日まであと三日を切っていた。
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ゆう - こんなに引き込まれたのは初めてです。内容も構成も素晴らしい小説でした。主人公とドラコのむず痒いようで愛おしい関係に心が温まりました。本当に面白かったです。あなたの物語を読めたことに感激しています。素敵な話をありがとうございました。 (2020年11月20日 23時) (
レス) id: ba6b4fdba7 (このIDを非表示/違反報告)
の - とても読み応えのある作品で、完結まで休みなしで読み終えてしまいました。物語が進んでいく中で、主人公とドラコの関係性が少しずつ変わり、謎も解明されていき、終始どきどきがとまりませんでした。私の拙い言葉では言い表せないくらい、本当にすてきな物語でした。 (2020年10月25日 4時) (レス) id: f5af52d735 (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - ナナナさん» 深夜ですか？！ありがとうございます！そこまで言ってもらえるととても嬉しいです(^^)本当にありがとうございます。 (2018年12月5日 7時) (レス) id: 0af6fdad08 (このIDを非表示/違反報告)
ナナナ - 読み始めたら止まらんくて気付いたら夜中の3時まわってた！とても引き込まれました〜とても面白かったです (2018年12月5日 3時) (レス) id: f9de44e996 (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - 水素ちゃんさん» こちらこそありがとうございます。始めて書いたハリポタ作品なだけあって、至らぬ点があったにではないかと何度も読み返したあの頃が懐かしいです^ - ^そんな経緯もあってか、真摯なご感想に感激しました。こちらこそ貴方様の様に素敵な読者様に出会えて光栄です。 (2018年6月16日 18時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アサノ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月21日 23時
