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196 秘宝 ページ21

Aの声は震えていた。


ドラコは呼吸の仕方を忘れたように、自分の全部が止まっている様な気分だった。

頭の中でAの告白が、ゆっくりと反芻しては消えて行く。


「自分でも驚いたわ、こんな自分勝手な気持ち悪い感情があるなんて…
将来は闇祓いの一員になるのだから、感情なんて持っていてはいけなんだってそう言い聞かせていたから、余計、ね。

でも私も普通の女だったみたい。


けど、この間貴方の部屋であの写真を見た時、確信したの____
貴方が求めているのは、今の私じゃない、昔の、鳶色の髪に、青い目を持った、

貴方が本当に求めているのは、大切な幼馴染みだって…」

Aの目はすっと自信なさげにドラコから、逸れて、悔しさとも哀れみとも、同情ともつかない複雑そうな顔に、無理矢理笑みを浮かべていた。

ドラコの脳裏に一瞬、二年前のあの冬の日の顔がちらついては消えた。

「行って、ドラコ。」

Aはスッと向かい会っていた身体を反らした。
ドラコは戸惑った、
Aの目はドラコを見ない。
すっと下に逸らされた目は、何かを懸命に堪えているようで、震える指先は滑稽なまでに青ざめていた。

「アレンがここを離れた理由を察して欲しいの。
貴方は自分のご両親を助けるべきよ。
だってその為にずっと、辛い思いをしていたんでしょう?」

分かるわ、言葉ではそう訴えってみせても、弱々しい声は全く説得力がなくAは自分が情けなかった。




「(馬鹿、これじゃあ此処に居ていってだだこねてるも同然だわ。)」


Aの内心の葛藤を知らず、ドラコは不意に歩き、一歩一歩踏み込んでいく。

迷う事なく禁じられた森へつま先を向けている事に、Aはホッとした反面、どこか穴でも開いた様に気分だった。
ところが、ぴたりと足音はAの隣で止まり、Aはえっと顔を見上げた。


「…ドラコ?」



Aを見つめたまま、黙っているドラコは徐にAの手を取った。


「ちょっとドラコ、待って何を、」

ぐいっとAの視界が揺らぎ、Aは自分の両足が地面から離れた事に気がつくのが数秒掛かった。
遠く似合った筈のドラコとの距離が急に近くなり、Aは戸惑う。


「ド、ドラコ?!」
「悪いけど、僕は僕を愛してくれた両親が大切だ、ソレはなにものにも変えられない。
多分父上や母上も同じだと思う、」
「ならコレは一体何の真似、」


Aが言い切る前にドラコはAを抱えてUターンし、あろうことか城まで走り始めた。

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ゆう - こんなに引き込まれたのは初めてです。内容も構成も素晴らしい小説でした。主人公とドラコのむず痒いようで愛おしい関係に心が温まりました。本当に面白かったです。あなたの物語を読めたことに感激しています。素敵な話をありがとうございました。 (2020年11月20日 23時) (レス) id: ba6b4fdba7 (このIDを非表示/違反報告)
- とても読み応えのある作品で、完結まで休みなしで読み終えてしまいました。物語が進んでいく中で、主人公とドラコの関係性が少しずつ変わり、謎も解明されていき、終始どきどきがとまりませんでした。私の拙い言葉では言い表せないくらい、本当にすてきな物語でした。 (2020年10月25日 4時) (レス) id: f5af52d735 (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - ナナナさん» 深夜ですか?!ありがとうございます!そこまで言ってもらえるととても嬉しいです(^^)本当にありがとうございます。 (2018年12月5日 7時) (レス) id: 0af6fdad08 (このIDを非表示/違反報告)
ナナナ - 読み始めたら止まらんくて気付いたら夜中の3時まわってた!とても引き込まれました〜とても面白かったです (2018年12月5日 3時) (レス) id: f9de44e996 (このIDを非表示/違反報告)
アサノ(プロフ) - 水素ちゃんさん» こちらこそありがとうございます。始めて書いたハリポタ作品なだけあって、至らぬ点があったにではないかと何度も読み返したあの頃が懐かしいです^ - ^そんな経緯もあってか、真摯なご感想に感激しました。こちらこそ貴方様の様に素敵な読者様に出会えて光栄です。 (2018年6月16日 18時) (レス) id: 2c5d1feb72 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサノ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年9月21日 23時

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