失いたくないもの ページ21
目が覚めると、実弥の顔があった。少し目が赤いのは泣いた証拠だろうか。
しのぶさんも、玄弥くんも無一郎くんも亡くなった。私だって目が腫れているに違いない。
「A、目ェ覚めたか……。お前はもう戦うな。その腹の傷じゃ戦えねェだろォ。」
『何言ってんの、まだ戦えるよ!!実弥も酷い怪我じゃん、自分のこと棚にあげないでよ。』
「俺の体は特別丈夫だからなァ。しかも体格的に出血の許容量が違ェ。」
『でも、まだ全然動ける。傷の手当てもしてあるから大丈夫。』
私が起き上がって刀を握ろうとすると、実弥に抱きしめられた。その刹那、見えた表情は酷く辛く苦しそうに見えた。
「私情を挟んでるのは分かってる。Aまで失いたくねぇんだよォ。玄弥も守れなかった、その上お前まで居なくなったら俺は……」
『どっちが先に死んでも恨みっこなしだって約束したよね。実弥らしくないよ?何言われても私は無惨のところへ行くから。』
「ッチ……」
少し冷たい言い方をしたのは、そうでもしないとその言葉に甘えてしまいそうだったから。
私も同じ気持ちだよ。実弥に死んで欲しくないし、私だって生きていたいんだよ。実弥が私に生きる理由をくれたんだもん。
伝えたいことはまだいっぱいあった。でも、肝心なところで私は何も言えない。
私が心の中でうじうじしていると、悲鳴嶼さんの視線に気がついた。
「不死川……蒼天……いつの間に恋仲になっていたのだ?」
抱きしめられたのを見られていたのは少し恥ずかしい。
『つい先日ですよ』
それを悟られまいとして平然を装って答えると、彼は「そうか」と一言こぼして、無一郎くんの元を離れてこちらへ歩いてきた。
無一郎くんの亡骸には彼の羽織がかけられていた。
無一郎くん……玄弥くん……、ありがとう。君達の想いはきっと私達が繋ぐからね。
『さて、早く無惨のところに行かないと。今も皆が命を削って戦っていることでしょうし。』
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ゆりなんぽん - あぁもうハラハラします!せめて、夢主だけでも幸せになって! (2020年6月6日 18時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)
日向鬼@低浮上(プロフ) - 好き好き好き好き好き好き好き好き好き((頑張ってください!最後二人には幸せになってもらいたい…!! (2020年6月1日 22時) (レス) id: 98b52071c9 (このIDを非表示/違反報告)
なな - もう!不死川くんキュンキュンしちゃうわ!(蜜璃ちゃん風)実弥の落ちが好きになる…! (2020年4月26日 9時) (レス) id: 0166b3d8d2 (このIDを非表示/違反報告)
なるは。(プロフ) - コメントありがとうございます!個々に返信できなくてすみません……でも本当に応援のコメントが励みになっているんです。もう感謝しかないです……これからもこの作品をよろしくお願いします! (2020年4月23日 19時) (レス) id: 091bffa261 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 続編おめでとうございます!!とーってーっも面白いので、応援してます!! (2020年4月20日 14時) (レス) id: 0166b3d8d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なるは。 | 作成日時:2020年4月16日 10時