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とんとんからり、とんからり。
とんとんからり、とんからり。
何処か物寂しい音を響かせながら、規則正しく機(はた)を動かす。
伏せる貴方の隣の部屋で、私はひたすらに機を織る。
私は知っていた。
私の様なものの羽を織り込んだ反物は、とても人の心を打つ。
遥けき昔から、それの為に人に捉えられた私の同胞が、どれほど、居たことだろう。
だから羽一枚、抜き取っては、織る布の合間合間に織りいれる。
ひとおり、ふたおり、と布を織っては、また一枚、二枚と羽を抜く。
羽一枚、抜き取る度に、私の体には痛みが走る。
貴方の傍らにいるための姿を保つ力も、この羽に授かったもの。
一枚、羽を抜き取る度に、少しずつ、少しずつ、その力が失われていくのが分かった。
けれども貴君を失ってしまっては、この姿には何の意味もない。
儚き紅葉の葉の様に、貴君の命を散らせはしない。決して。
ーーーーーーー
季節が流れ、鈴虫がリンと鳴く頃になってもまだ、反物を売って稼いだお金はお薬を買うには足らなかった。
機を織り続け、羽を抜き続ける私の手は、今や傷だらけになった。
ただ織る反物に血が付かぬようにと、それだけを気をつけて、構わず機を織り続ける。
機の手を止めるのは病に伏せる貴方のお世話をするときだけ。
貴君の傍らに座り、咳き込むあなたの背をさする。
すっかりやつれてしまった貴君の背中から伝わってくる骨の感触が、私を急かす。
ある日、貴君のお顔を拭う私の手を、貴君がそっと握った。
「綺麗な指だね」
と傷だらけになった私の指を、いたわるように、包み込むように、握る。
ああ、その手があまりに冷たくて。
凍えるように寒かった冬の日ですら、暖かく私の手を握ってくれたその手が。
あと、いか程の時間が残されているのかな。
貴君に、私に。
「いつか、綺麗な指がなくなっても、それでも、私を愛してくれますか？」
貴君は咳き込みながら、
「当たり前だよ」
と言ってくれる。
そうして大きな手に包まれていると、手の痛みすらなくなる気がする。
貴君が綺麗と言ってくれた私のこの指がなくなっても、
貴君が綺麗と言ってくれたこの声がなくなっても、
どうか貴君のこの手だけは残してくださいと、祈らずにはいられなかった。
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夢美 - 絵凄く上手でした。 (2019年8月1日 11時) (
レス) id: 32185305c0 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 鶴の恩返しですか？面白かったです！！！ (2018年11月27日 21時) (レス) id: afa6322ad5 (このIDを非表示/違反報告)
ｎｏｔリア充 - 絵が凄い上手ですね！お話しも凄く良かったです。黒彩良いですね最近は上彩ですがやっぱり黒彩も捨てがたいなあ (2018年11月24日 19時) (レス) id: fb8a1e68c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琥珀 | 作成日時：2018年11月23日 18時
