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「…………もう死のう」
その言葉は、多分私の人生の中で唯一の正解だった。
ふらふらと歩きながら、逆に今までなぜ行動に移さなかったのかが疑問に思えてきた。そう思えるほどに、私の人生には生きる意味がなかった。そんな記憶をかき消すように、凍えながら行く宛もなくただ歩き続けた。日が傾きかけているこの時間帯は徐々に寒さが厳しさを増してくる。手袋をつけていない指先は、悴んで感覚がなくなっていた。
なんとなく、ただ反射的に、道を反れて路地裏に足を踏み入れる。にゃーにゃーと猫がたくさんいるそこは、光が差し込まないので薄暗くて視界が悪い。しかし、感覚的に足を進めていくと、案外するりと先へ進むことができた。壁づたいにさらに歩き続けていくと、何かに強く手首を掴まれた。何だろうと憚り、後ろを振り返ると、二つの瞳と目があった。
「ねえキミ、こんなとこで何してんの?」
いかにも軟派であろう男が、薄気味悪い笑みを浮かべながら私にそう言った。その後ろには仲間と思われる男たちが二人控えている。
「……」
「どうしたの? 制服来てるけど学生さん? 迷ったの? 良かったらオレたちが案内してあげよっか?」
「……」
「そんな薄着で寒くない? 大丈夫?」
「……」
「おい、何か言えよ」
「……」
「チッ、無視してんじゃねえよこのアマァ!」
そう言うが早いか、右頬に殴打特有の痛みが広がった。口内の傷が開いて血が滲む。コンクリに臀部がぶつかると、痣が鈍く痛んだ。
「オイ、お前何殴ってんだよ」
「イラついちまったもんだから、つい」
「それより、殴っても声ひとつあげねえとか……」
「ぜってえマグロだよな、コイツ(笑)」
「だよな。それに別に可愛くねえし、体つきもヒンソーだし。まあ今日はコイツでいいか。オラッ、立てよ」
手を強く引っ張られ、無理やり立たされたかと思うと、背中を壁に強く打ち付けられた。
「じゃあ、オレたちといいことしよっか♪」
「……」
「チッ、これも無視かよ、つまんねえのっ!」
ブラウスが強引に引きちぎられ、ボタンが宙を舞うと同時に素肌があらわになる。
「うげっ、やっぱコイツチョーヒンソーじゃん。まあいいや、早くやろうぜ」
「そうだな」
抵抗するだけ無駄だ、面倒くさい、いつものように心を空っぽにすればいい。そう思ってを瞼を閉じようしたとき、
「ねえ、オニーサンたち何やってんの?」
赤いマフラーを巻いた男がそう言った。
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作者名:はむめろん | 作成日時:2018年8月14日 15時