今日もモブはモブらしく、ヒロインルートを外れます

お節介な恋話 ページ12

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｢やだ先生!どうしたのその手｣

｢ちょっと転んじゃったんです｣

｢嫁入り前の大事な体なんだから大切にしなさいよ?｣



寺子屋のご近所さんは優しい方ばかりだ。
いつもこうして朝の掃き掃除をしながら話しかけてくれる。


けど...




｢それで、良い旦那候補は見つかったの?｣

｢あはは...それがまったく..｣


｢世の男達はこんなに良い子を置いて一体何してるんだか。私でよければたくさん縁談相手紹介できるから先生も....って、あら?先生ー?｣




幾つになっても女子は女子。恋バナとお節介から逃走すれば私を探す声が遠くで聞こえる。

ご近所さんの対応はいつもの事だけど、昨日のこともあってか今日は朝から溜め息が出る。





" 関わるなと言われれば言われるほど関わり合いたくなるのが人間の性ってやつだ"





何が人間の性よ！悪魔みたいな笑顔して！


昨日の意味深な発言を思い出し、作った拳が力み震える。
空中にメンチを切ったところでどうにもならないけれど。これが気休めに変わる私は相当疲れているのかもしれない。


とりあえず寺子屋に着いたら刺股の場所を再確認しなければ。
どこの誰に使うとは言わないけど、刺股さえあれば私でも抑え込みくらいはできるはず。どこの銀髪天然パーマとは言わないけど。



あれこれと考えれば寺子屋はもう目と鼻の先。

しかし、入口付近には見慣れない少年と少女の姿があった。






｢朝日奈さんですか?｣




眼鏡の少年にそう尋ねられ、戸惑いながらも首を縦に振る。

すると、チャイナ服の少女が軽々と私を持ち上げて、





「ちょっ、ちょっと!どう言う事ですか?!」


「事情は後で話します!とにかく今は予約時間に間に合わないと...」

「落とされたくなかったら大人しくするヨロシ」





落とされたくなかったらって...米俵のように私を持ち上げる少女の力は異常で。降りたくても身動き一つ取れない。


私を持ち上げどこかへと走る少女と少年。
状況の掴めない私は、ただただ遠ざかる寺子屋を見つめるしかなかった。






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