Ep.16 ページ16
.
｢ まーだ怒ってんの？ ｣
｢ あたりまえです！私をなんだと思ってるんですか！ ｣
｢ 巨乳保育士 ｣
｢ 刺し殺されたいんですか...？ ｣
あの夜の出来事があって以来、更に警戒する私とは裏腹に、増して構うようになった銀時さん。
反省の色を見せないその男へ使用中の包丁をギラつかせる。
｢ あんたらうるさい。痴話喧嘩は余所でしてくだせぇ ｣
被害者の私にフォローを入れるどころか纏めて邪険に扱う総悟君に、他人の振りをして朝食を食べ進める土方さん。いつ帰ってきたのかソファーで二度寝をかます高杉さんに、目を見張る程の高さにご飯を盛る神威さん。
相変わらずのシェアハウスは、忙しい平日の朝だって言うのにここぞとばかりに協調性がない。
｢ 朝っぱらから君はほんとに元気だね ｣
｢ 朝からその量を食べる人には言われたくありません ｣
横でクスクス笑う神威さんに慣れた返しをするけど、どこか違和感に気づき調理の手も止まる。
｢ 神威さん、もしかして怪我されてますか？ ｣
私の言葉に一瞬表情を詰まらせるけれど、すぐにいつもの笑顔に戻る神威さん。
長袖のシャツからちらりと覗く手の甲には、何か、剃刀のようなもので付いた幹部が見えた。
｢ あっ、ほら手 ｣
｢ 見せてください。応急処置程度ならできますよ ｣
催促するように手を出しても、従うどころか離れるように後退る神威さん。不思議に見つめても返ってくるのは笑顔だけで。
｢ 昨日クローゼットの角に擦っただけだし、俺治りはやいから大丈夫だよ ｣
｢ 治りが速い速くないの問題じゃないですよ ｣
ほら、と再度促し近づけば、
｢ しつこいなぁ...大丈夫だって言ってるだろ ｣
それは冷たく低い声で、
その瞳は寄るなと威嚇する獣のようだった。
初めて見るその姿に驚き後退った私に、今度は焦ったようにまた笑顔に戻る。
｢ あっ、えっと..本当に大丈夫だから ｣
｢ はい...こちらこそ無理やりすみませんでした... ｣
｢ ....でも一応、これだけは受け取ってください ｣
静かに差し出したのは成人男性には似合わないうさぎ柄の絆創膏。その人は呆気に取られたようにそれを見つめ動かない。
｢ 園児用にいつも持ち歩いててこう言うのしかありませんが.. ｣
観念したと言わんばかりに吹き出す神威さん。
「わかったわかった」と受け取る姿に胸を撫で下ろすも、先に見えた時計が遅刻寸前の時刻を指していて。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 522人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
S(プロフ) - めちゃんこ好きです！更新待ってます！ (8月11日 14時) (
レス) @page37 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
春風 - 更新ありがとうございます！とっても嬉しいです！これからも楽しみにしています！ (2022年11月30日 15時) (レス) id: 1ece860df7 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 更新待ってました…！すごい嬉しいです！銀さん作家だったんだと驚きでいっぱいです！あと文章の書き方がとてつもなく好きです、ありがとうございます！ (2022年11月28日 8時) (レス) id: 1052176700 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ - このお話大好きです…！更新待ってます！ (2022年4月4日 18時) (レス) @page31 id: fc9ca49c49 (このIDを非表示/違反報告)
粥 - 何回見ても、ストーリー面白いし好きです！更新されること願ってます！！！！ (2022年1月6日 23時) (レス) @page31 id: b23a2b20e9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：□白澤□ | 作成日時：2020年12月1日 12時
