夢の中で-4 ページ33
「ロゼワインから名前は取られた。色とその性質からだ。薄桃色の液体であり、飲むと能力向上が得られる。……成人男性の話だがな。性質はここからだ」
彼女は目を細める。その両眼には憤怒の情が映っていた。
「この薬は酒のように、十分に身体が発達していない子供が取ると、上手く成分を消化出来ずにその身体を傷付ける。しかも、この薬は若干の依存性がある。つまり」
ひゅっと喉を鳴らした。
「こんなものを長期間飲み続けたら、成長している身体は特にダメージを受けやすい上に、この薬に依存しやすくなる」
がたんと椅子を鳴らして思わずその場に立ち上がった。はくはくと口を動かして、舌が乾いているのに気付く。
「……期間は?」
彼女の手が拳に握られ、白くなって震えているのが見えた。震えそうな声でなんとか答える。
「これで、約、一ヶ月ほど。投薬回数は……実験と試合回数からして、七回以上」
「量は」
「一回で六十五ミリリットル」
試合だけでなく、実験も行われているようだった。試合は三回、それとは別にデータのために投薬が四回。決勝戦までに、実験が大台に乗る。……恐らく、投与回数は十回を超えるだろう。
「……まずい、まずい! 今すぐにでも投与をやめさせ、排出を促す薬を入れなければ! ああくそ、どうする、あの男の監視下だ、どうやって投与をやめさせる! やめさせたとしても排出薬はどうすれば……!」
冷や汗を垂らしながら焦った顔でテーブルを叩く。どうすれば、と呟いてから奥歯を噛み締めて思考の渦に入ったらしい、黙り込んでしまった。
神のロゼ、改め天使のロゼはかなりやばい薬らしい。子供の身体にダメージを与え、その上常習性がある。
原作がどうのこうの言ってられない、彼等に直接害を与える、子供向けアニメとは思えないもの。
……影山がそんなものを与えたのだろうか。いや、しかし、前話したときにリウスはそこまで影山に怒りを向けてはいなかったように思えた。じゃあ、誰か別の人間に。
待て、それよりも。
「……リウス、聞いてもいいかな」
原作には出てこない薬。
そして、彼女はこの薬のメリットデメリットを知っている。
そして、プロジェクトZの書類に書いてあった"復元版"という言葉。
私の言葉に動きを止めたリウスは、一度口を開いてからつぐみ、息を吸った。
「ああ」
そして、真っ直ぐにこちらを向いた。
「天使のロゼは、私が作成した薬だ」
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黒牡丹(プロフ) - 焔さん» 好みと言っていただけて本当に嬉しかったです。書けないことになれば、とにかく頭の中に思い描いていたネタだけでも箇条書きにしてでも投稿はするつもりです。嬉しく優しいお言葉、本当にありがとうございます。 (2020年7月23日 12時) (レス) id: 51616291f0 (このIDを非表示/違反報告)
焔 - 黒牡丹さん» レスありがとうございます。黒牡丹様が帰ってきてくださって、今の心境を教えてくださっただけでも嬉しいです。ありがとうございます。 (2020年7月14日 22時) (レス) id: 3ce071c9ce (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 焔さん» コメントありがとうございます。お話の続きを私自身が書くのは無理だと悟ってしまいました、申し訳ありません。なんとかして、彼女の物語を完結させたいと思います。どうか、よろしくお願いします。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 夜さん» コメントありがとうございます。何度もコメントしてくださっていたのに、本当に申し訳ありません。私の手から離れるかもしれませんが、それでも一度思い描いた物語として皆様の元に届けたいと思っています。読んで頂いて、本当にありがとうございます。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます。こんな形でのコメント返信申し訳ありません。せめて、物語として皆様の目に触れるようにしたいと思います。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
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