47.訂正 ページ47
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9回表、点差は3点。
ツーアウト一塁から、一番轟雷市。
フォークを決められ三振。
私達は、球場の外にいた。
3年生全員が、轟監督に、一年半のお礼を言う。
そして、私たちに送られるエール。
「もう泣くなよ、望月」
先輩たちの顔は、晴れ晴れとしていた。
『…3年間、お疲れ様でした』
ありがとうございました。
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薬師高校のグラウンドに、私と真田はいた。
「…完敗だわ」
『…そうだね』
全員帰ったので、もう誰もいない。
目を赤くした監督は雷市を連れてさっさと帰っちゃったし、
ほかの部員も、いそいそと帰っていった。
自分の部屋で、こっそり泣くんだろう。
「……俺達は、雷市に頼りすぎてた」
『…うん』
「雷市は、すげぇよ…すげぇやつ。
でも、まだ1年坊主で、試合経験だってない」
『…うん』
「あいつの負担をどれだけ減らしてやるか、
それがこれからの課題だな」
『…うん』
頷くだけの私に、お前もなんか言えっての、と真田が笑う。
『…真田、さ。一年の春言ったよね。
野球にそんなに懸けるつもりない、って』
すると彼は、少しだけ眉を下げて驚いたあと、
にっと笑った。
「…………訂正するよ。
俺の高校生活、全部つぎ込む。
そんで…
監督を、雷市を、甲子園に連れて行く
俺の、ボールで」
『………………』
私は黙って拳を突き出す。
あの時と同じ。
『明日から、再出発。期待してるよ、エース』
「お前にも期待してるぜ、鬼マネージャー」
コツンと拳をぶつけ合う。
未来に向かって。
「あ、ついでにお前も連れてってやるよ」
『今訂正しないで?!』
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2015年12月6日 0時