11.ズレ ページ11
.
.
「望月さん」
『わっ？！えっと…』
「名前忘れた？俺はーーー」
『待って、今思い出す！』
放課後のチャイムがなる中で、かばんに荷物を詰めていると、爽やか笑顔の野球部の人が話しかけてきた。
びしっと片手を突きつけて考える。
えっと…たしか…
『真田くん』
「お、せーかい」
へらりと真田くんが笑う。
わ、こうして見ると背が高いーーー
「野球部のマネージャー、やるんでしょ？」
『うん！』
「入部届け、一緒に出しに行こうよ」
『行く行く！』
真田くん、いい人だ…！！
じぃんとしながら2人で並んで歩く。
すると真田くんが、そういえば、と私に聞いた。
「昨日は職員室で何騒いでたの？」
『…へ？』
「なんか車が3つとか…」
『な、なんで知って…ていうか騒いでたわけじゃ…』
「やー、見てたから」
『全然気づかなかった…あれは、ちょっと人違いしちゃって』
「どんな人違いだよw」
『あはは、ていうか、真田くんポジションは？』
「ピッチャー。ファーストもやるけど」
『おおーー！！』
私はにこっと笑っていった。
いつも通り。
『じゃあ、甲子園に行ったら、新聞とか載っちゃうかもね！！』
でも、私の予想する反応を、真田くんはしなくて
「甲子園？………いやいやいやw」
『…え？』
「この高校は、地区大会ほとんど1回戦負けだよ。
甲子園に行くような学校じゃない」
『で、でも！行きたいでしょ？』
「そりゃー行けるもんなら行きたいけど」
真田くんは、私を見ずに言った。
.
.
「そこまで野球に懸けるつもりないし」
.
.
悪意のない言い方だった。
ただ、本心だったんだと思う。
.
.
私の中の、野球児のイメージが、ズレる。
ーーー「俺は甲子園に行くよ」
ーーー「稲実って、そんなにすごいチームなんだろ？」
ーーー「稲実行って、エースになってやる」
ーーー「だったら、余計戦ってみたくなる」
.
.
「面白いねー、望月さんって」
『………………』
「あ、佐藤先生。入部届けお願いします、2人分」
「ああ、そこに置いておいて」
ーーー「俺が、甲子園に連れてくから」
どうして今まで忘れてたんだろう。
幼なじみの、あの言葉を。
「じゃあ望月さん、また明日」
『…………うん、』
……………鳴。
今、鳴にすっごく、会いたいよ。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 459人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すた | 作者ホームページ：
作成日時：2015年12月6日 0時
