25.一番 ページ25
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なんで、おまえ、
『めーーーーいーーーーー?私だよー?』
こんな時だけ、現れるわけ?
『………………開けるよ?!』
たのむから、
「来んな」
よりによって、お前さ、
『これだけ、言わせて』
俺が一番かっこわりぃ時にーーーーー
『鳴が一番かっこいいよ』
『少なくとも、私はーーーそう思った』
扉の鍵は開いていた。
Aが開けられなかったのは、俺が背中で押してたから。
ずっと、扉に背中をもたれて、こいつの言葉を聞いてた俺は
『…………………鳴?』
もたれていた身体を起こして、
扉を開けて、腕を引っ張って、部屋に連れ込んで、
立ったまま、何も考えずに、夢中でこいつを抱きしめた。
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笑っちゃうよな。
ずっと、手すらつなげなかったくせに、
告白すらできないくせに、
好きで好きで仕方ない女が、今腕の中にいるなんて。
ゆっくり腕の力を弱めると、俺に押し付けられてたAの顔が離れて、
ちょうど頭一つ分くらい下に、ぽけっとした顔があって、
ばっちりとあった視線。
目を離せない、離れない。
冷静に思考とか、できない
Aの頬に手を当てようとした、その時、
ぺたん、と。こいつのあったかい手が俺の頬にふれた。
『………………顔色、悪いよ?』
「…………………っ、」
きっとこの言葉はこんな時に使うんだ、
ーー我に返る
そして、もう一つ、これもこんな時に使うんだ
ーー空気の読めないヤツ、
Aは俺を見てる。
心底心配そうな顔して、俺を見てる。
俺がして欲しいのは、そんな顔じゃない。
『ーーちょっと鳴?!』
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2015年12月6日 0時