Diary7 バレンタインデーは乙女の戦場である。 ページ8
「……なににしよう」
図書室のカウンターに座ってレシピ本を開く。二月に突入して世間が騒ぐものと言えば?そう、バレンタインデーである。ブラウニー、生チョコ、トリュフにクッキー、マフィン。ありとあらゆるチョコ菓子が出回る日。毎年の恒例行事のそれは進学校である洛山でも例外ではない。
そこかしこで本命やら友やら義理やら何を作るか相談する声が聞こえてくる。え?私?彼氏も居ないし作るのは友達に渡す友チョコだけだけど?
……今年は黛さんにも渡そうかな。なんやかんやで一番仲がいい異性は黛さんだし。ただあの人の好物はくさやである。くさや。大事な事だから二度言った。あれを好んで食べる人がいるとは思わなかった。お酒のツマミで父さんが食べていたのを少し貰ったこともあるけど本当に臭いのだあれは。
ビターチョコにしておこう。それなら甘さも控えめだしいいよね。何を作るか再びレシピ本に目を通す。難しいのは却下。クッキーとかは簡単だけどバターを常温に戻す手間がかかる。あれは大変だし時間もかかるし。
それに時間もそんなに無いのだ。三年生が自由登校になるのはバレンタインデーの前日。なんたる間の悪さ。そして休日明けではない。前日に学校から帰ってから作ることを考えるとやはり手間のかからないものの方がいいだろうか。
やはりここはトリュフにしておこうと思う。刻んで溶かすだけだし。生クリームとか色々入れるけど。となると学校帰りにラッピング用の箱や確か家には無かったはずのココアパウダーを買って帰らねば。
「神崎、貸出頼む。神崎?かーんーざーき?」
延々と考えていた私は目の前に黛さんが立っていたことに気づかなかった。目の前に黛さんの顔が迫って初めて気づく。うわ、駄目だ仕事に集中しなければ。
「はい、貸出完了です。……黛さんそろそろ自由登校なのに本借りて良いんですか?」
「期限は守る。……なあ、それチョコレートか?」
満足げな黛さんが私の手元のレシピ本を指しながら言う。開きっぱなしだったそう言えば。
「そうですけど。あ、心配しなくても黛さんにも渡しますよ?」
「……ん、楽しみにしてる」
ポンポンと私の頭を叩いて黛さんは図書室から出ていった。良かった、受け取ってくれるのか。それにしても……ずるいですよ、黛さん。
「……こんなのどきどきするじゃないですか……!」
きっと私の顔は今真っ赤だろう。気合いを入れてチョコを作らなければ。
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黛夕那(#・∀・#)(プロフ) - あの、初めの千尋saidで神崎葉月ってでたんですが… (2019年9月1日 12時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
ゲスでゲス - かぁいい作品をありがとうございました・・・ (2018年8月26日 9時) (レス) id: ed4900357a (このIDを非表示/違反報告)
カコ - すごく可愛かった。キュンとした。素敵な作品をありがとう。 (2018年7月22日 21時) (レス) id: 87181eb08c (このIDを非表示/違反報告)
マリア - 続読めたいです (2017年9月26日 10時) (レス) id: 8569ec9184 (このIDを非表示/違反報告)
葉隠叶芽(プロフ) - 飛鳥さん» ありがとうございます!なるべく早く書き上げられるようにしますので楽しみに待っててください! (2017年7月7日 23時) (レス) id: 0edaa43e99 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉隠叶芽 | 作成日時:2017年3月23日 20時