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・
どれくらいの時間
路面電車に乗っているのだろう
高校がある駅に向かって
反対回りで行っているから
かなりの時間は覚悟しないと…
街の中心部で沢山の人が降り
なんとなく僕らは隣同士で席に着く
君は僕を気にも止めず
鞄から文庫本を取り出し
いつもの様に密やかに捲る
その音は優しくて柔らかで
頭の中を空っぽにしていく
いつもより早く起きて
電車に乗り込んだ僕は
いつのまにかうつらうつらと
深い眠りに誘われていた
・
肩口を突く指先
それはやがて大きくなり
揺さぶられる身体
慌てて立ち上がれば
乗客たちの怪訝な目と
君の悪戯っ子な笑み
「えっ？何？地震？」
「……肩、重いです」
「ごめん」
謝って再び座席に付いて車窓を見る
あっ、あれ？
見慣れた景色に感じる違和感
これは帰り道で見る風景
って事は…
車窓に顔を近付ければ
降りる筈の駅は遥か遠くで
もう姿形は見えない
再び君を見れば何食わぬ顔で
相変わらず文庫本を読んでいる
「起こしてくれたらいいのに…」
僕がぼやく
「起こす義務はありませんから」
視線はページのまま君が呟く
「そうだけど…」
と言いかけてふと気付く事実
僕を起こす義務は
君にはないかもしれないけど
じゃあ何で君は降りなかった？
寝惚けた肩ぐらい押し返して
さっさと下車すればいいのに…
いや、今はそんな事より早く降りなきゃ
聞こえる筈ないのに
始業を告げるチャイムが耳奥で鳴り響く
次の停留所で慌てて降りれば
何故か君もついて来る
路面電車を見送って
反対側のホームに行こうとしたその時
動きを拒む様に掴まれたシャツ
振り返れば、君が俯いて唇を尖らせていた
すれ違い遠ざかる反対側の路面電車
僕は戸惑いを隠せないまま、君を見る
「電車…行っちゃったよ」
「うん」
背中越しの摘む指先が一瞬、惑う
僕はそっとため息をつく
間に合わない1時間目
僕の嫌いな物理だからそれはラッキー
せめて次の英語からなんて思うのに
……どうするんだ、これ
「学校行かないなら…サボる？」
君は顔を上げて僕を見る
吸い込まれそうな瞳に
屋根越しの青空が映り込む
「サボる？」
同じ言葉を繰り返す君に僕が頷くと
君は嬉しそうに僕の手を引いた
まるで行き先が決まっていたかの様に
まっすぐ歩き出す君
ただ後ろをついて行く僕
戸惑う気持ちとは裏腹に
心底では別の想いが芽生え始める
まぁ、たまにはこんなのも悪くない
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青山白樹(プロフ) - だんぼさん» (；ﾟДﾟ)何でその設定が解ったんですか？まさか女学生がだんぼさんモチーフだって事がバレてました？笑雨の日のお迎えって面倒臭いけど2人の距離が縮まる気がしますよね。雨に濡れると甘さを増す香りの中いつまでも優しく甘い2人でいて欲しいと願いを込めました。 (2019年6月29日 18時) (
レス) id: dc26697653 (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - 青っち〜天邪鬼で意地っ張りで、でもすごく分かりやすいあの子♪ 蒸し蒸しとした季節ですが爽やかなお話の贈り物 どうもありがとう♪ただひとつだけ心配なのは傘を貰った女子が腐ってたら…（笑）ガン見され尾行されてるかも〜2人ともッ背後に注意よ〜（笑） (2019年6月29日 13時) (レス) id: b513b55378 (このIDを非表示/違反報告)
青山白樹(プロフ) - やまさん» やまさんこちらにも感想ありがとうございます。雨で諦めてたピンクムーンを早朝見つけて朱鷺色に染まり始める空の中の月がほんのり染まった様に見えたんです。ピンクと言っても実際の色とは関係ないのですが。こんな場面なら小さな秘密もきっと特別になりますよね。 (2019年5月22日 10時) (レス) id: dc26697653 (このIDを非表示/違反報告)
青山白樹(プロフ) - やまさん» 素敵な感想ありがとうございます。昔近所に古い喫茶店が有り覗いたら意外に混んでいる店内に驚いた事があります。やまさんの話を聞いて思い出して書いてみました。ソーダ水頼んでもアイスを乗っけるそんな優しいマスターと何かが始まる予感を感じて戴ければ幸いです笑 (2019年5月22日 10時) (レス) id: dc26697653 (このIDを非表示/違反報告)
やま(プロフ) - そして、一つ前のお話も大変遅ればせながら拝読させていただきました。まさに桜月夜の宵！！桜色に染まる月の光を浴びる睦じいお二人に、胸がきゅんとします♪ (2019年5月22日 1時) (レス) id: 0f4c7ca2f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青山白樹
作成日時：2014年10月2日 12時
