何も知らぬ君へ ページ46
「嗚呼、なるほど。なるほどなァ、アンタがあの子の……！」
してやられた、という思いが半分。何故、という思いが半分。
「知り合いかもしれない、と思ってはいたけどアンタなのは想定外でしたよぉ……何で教えてあげないんです？可愛い子じゃないですか」
普段カメラの前に立っているときとは打って変わった険しい表情の彼に冗談めかしてそう言えば、思いっきり睨まれてしまった。
「美形は怒ると怖いって本当なんですねぇ」と思わず呟きそうになったが、流石に怒られそうなのでやめた。
一方で彼は、普段しない表情をしたせいで表情筋が疲れたのか、沈黙に耐えかねたのかゆっくりと口を開く。
その口から紡がれた言葉に対し、今度はジュンが顔を顰める番だった。
「は？何すか、“余計なことするな”って……そんなにあの子に正体知られるのが嫌っすかぁ？」
無意識にも煽るような口調になってしまったことを自覚する。
ジュンは納得がいかなかった。だって、彼女は本当にたからものに触れるように愛おしげに“彼”を語ったのだ。心の底から眼前の男を探し求めていたのだ。───思わず嫉妬してしまいそうになるほどに。
さらに言葉を重ねようとしたその瞬間、ジュンの脳内にあるひとつの可能性が浮上した。
「……アンタ、まさか」
彼が気まずそうに視線を逸らしたことにより、それは確信に変わった。
思えば、伏線は至るところに散りばめられていた。
それを無意識下でひとつひとつ丁寧に拾い上げてきたジュンは今、解に辿り着いたのだ。
「なら！なら尚更、何で言ってやらない？！」
思わず胸ぐらを掴めば、彼は申し訳なさそうに微笑んだ。
彼女によく似たその貌が諦めたように笑うのが許せなくて、ジュンは叫ぶように、祈るように怒鳴る。
この言葉は眼前の男を傷つけると知っている。それでも、言わずにはいられなかった。
「“自分は貴女の家族だ”って！教えてあげるぐらい悪いことじゃないはずでしょう？！」
だって、家族という繋がりがどれほど重たいものか、どれだけ人に影響を与えてしまうものなのか、漣ジュンは誰より知っていたから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 578人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅鮭@くじら(プロフ) - 甘風さん» 星見のキャラを気に入っていただけてすっごく嬉しいです〜！ありがとうございます(..›ᴗ‹..) 更新がんばります！！ (2022年12月9日 16時) (
レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - みるタピさん» コメントありがとうございます！そろそろ更新速度戻す予定なのでこれからもよろしくお願いします！(⑉• •⑉) (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
甘風 - とっても面白くて好きです！更新頑張ってください！星見ちゃんのキャラが良い...！ (2022年12月5日 23時) (レス) @page33 id: e3065dc72d (このIDを非表示/違反報告)
みるタピ(プロフ) - とても楽しんで読ませていただいています！テスト大変だと思いますが頑張ってください！ (2022年12月5日 18時) (レス) @page33 id: c5e7b71543 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 立花さん» 立花さん、コメントありがとうございます！！正直ギャグには全然自信がないのでそう言っていただけて嬉しいです！笑 更新がんばりますね〜！！ (2022年9月30日 21時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
