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『え?あぁはい。多分?』
「なのに目の色はAと同じなのか。つまりそれはボタンが水色ということかね?」
『あれ、ボタンだっけな……あれ……??』
自分は今までそうだと信じて疑っていなかった。なのに、改めて問われると自信がなくなってくる。
自分を守ってくれた腕は布じゃなかったか?頭を撫でてくれた手は?
『(あ、でもそういえば……)』
くらいへや。みにくいばけもの。つめたいみず。
目を閉じればはっきりと思い出せるあの光景を眺めているうちに、あることに気がつく。
『(どれだけ殴られてもあの子から綿が出たこと、なかったな)』
そこまで考えてハッと宗の方へ向き直る。
『まってくださいその言い方!宗さんは何か知ってるんですか?!』
「……」
『あっまたそうやって無言で立ち去ろうとする!Valkyrieってみんなそう!意味深なことだけ言ってどっか行っちゃうんだから!』
それは昨日Aが眠れなかった要因である。
どうやらValkyrieは揃いも揃って言いたいことだけ言って立ち去る習性があるらしい。なくしてしまえそんな習性。
「ノンッ!耳元で叫ぶものではないのだよ!!」
『えっこれあたし悪くないじゃんね』
思わず素でそう呟いたAのことはフル無視し、宗は呆れたように言う。
「まあ僕は“あれ”ほど君に興味はないからね」
『会話の節々に暴言挟まないと死ぬんか……?』
「やかましいのだよ。ともかく、僕は君が思い出そうが何を知ろうが別に興味はない!」
自分の噂に疎いAは、そりゃそうだろ、逆に自分の記憶について興味ある人なんているのか?とでも言いたげな顔である。実はけっこういる。
「思い出せば君は酷く傷つくかもしれない。だからと言って僕は別に止めようとは思わない。興味がないからね」
『そんなに興味ない連呼しなくても』
「ただ、君に覚悟があるのなら。思い出したいと思うなら僕は協力しよう。それだけの話なのだよ」
『なら最初からそう言ってよ』というAの言葉を遮るようにして大きな音を立てて扉が閉まる。
本当に言いたいことだけ言って去ってしまった。
『って!鬼龍さんからの預かり物渡せなかったどころかヨハンナ持ってかれちゃったんだけど?!』
*
一方で部屋から出た斎宮宗。
彼は何かを堪えるように急いで無人の用具室に飛び込むと、倒れるように柱に持たれかかった。
「(危なかった……!あと少しで本当に余分なことまで言ってしまうところだったのだよ……!!)」
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紅鮭@くじら(プロフ) - 甘風さん» 星見のキャラを気に入っていただけてすっごく嬉しいです〜!ありがとうございます(..›ᴗ‹..) 更新がんばります!! (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - みるタピさん» コメントありがとうございます!そろそろ更新速度戻す予定なのでこれからもよろしくお願いします!(⑉• •⑉) (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
甘風 - とっても面白くて好きです!更新頑張ってください!星見ちゃんのキャラが良い...! (2022年12月5日 23時) (レス) @page33 id: e3065dc72d (このIDを非表示/違反報告)
みるタピ(プロフ) - とても楽しんで読ませていただいています!テスト大変だと思いますが頑張ってください! (2022年12月5日 18時) (レス) @page33 id: c5e7b71543 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 立花さん» 立花さん、コメントありがとうございます!!正直ギャグには全然自信がないのでそう言っていただけて嬉しいです!笑 更新がんばりますね〜!! (2022年9月30日 21時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
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