第十三話「掃除と遊びは区別して」 ページ9
七月後半になった。
もうIH予選が始まっており、勿論洛山バスケ部は初戦から快勝を続けていた。
今日は試合のない日で、本来ならば試合続きで疲れた体を休める日だ。
しかし現在私と茜を含むレギュラー陣は真夏の炎天直下、プールの底でデッキブラシ片手に走り回っていた。
七月の間使用されていたプールは先週の時点で貯められていた水が全て吐き出された。
洛山高校の水泳部は夏場は学校のプールではなく、近くのスポーツジムで練習するため今年はもう使われないからだ。
掃除には生徒会を始め各運動部が参加する。勿論バスケ部も例外ではない。
ただ丁度当番の日がIH予選の日と重なり、スタメン以外で掃除をした。
つまり私たちは掃除をする手筈ではなかった。のだが……。
「どーして赤点取った奴のために俺らが掃除しなけりゃいけないんだ……」
「仕方ないですよ。連帯責任だって赤司君が言うんですもの」
ギクリ。黛さんと茜の会話に約二名が肩を揺らした。
その背中に黛さんの冷ややかな視線が突き刺さる。
勿論赤点を取った人というのは葉山さんと根武谷さんのことだ。
その二人の補習を見逃してもらうために赤司君がとったのが、このプール掃除だった。
「こらA。あんたは被害者面しちゃ駄目でしょ」
「心読まないで下さい。怖いです」
実は、誠に不快ながら私も赤点を取ってしまった。
取った教科は物理。但しテストの成績自体は赤司先生のお勉強会のおかげで九十点と好成績だった。
では何故取ってしまったのか?答えは「名前を書き忘れたから」。
迂闊だった。問題が解けるということを喜び過ぎて肝心なところを忘れていた。
「まあまあ、あまり責めないであげて。
みっちゃん昨日征ちゃんに二時間半説教されてたんだから」
実渕さんが助け船を出してくれる。これぞ先輩……!と感動していると
「でもこいつらのせいで休めなかったんだぞ」
黛さんが水を差してきた。
「しつこい男は嫌われるんです」
腹が立ったので、持っていたバケツの中の水を黛さんににぶっかけた。
無様にも頭のてっぺんから足の指先まで前全てを濡らし、無言で突っ立ったままの黛さんを見て、葉山さんと根武谷さんが吹き出した。根武谷さんの豪快な笑い声が大気を震わす。
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