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第六十一幕 ページ15

「旧鼠…暴力は嫌いだけど、面白い奴だった…。」

今はもう、灰となってしまった足元の彼を見る。
ソラは憮然とした面持ちで同じ場所に視線を移す。

「ケッ、相変わらずお前の考えは分からん。
敵に情けをかけやがって、儂が来ていなければ確実に死んでいた。」

「でも、ちゃんと対話はできていた。
もっと違う形で出会えていれば「そういうもしもの話はやめろ」」

ソラはその貫禄のある声を唸らせ、灰を足でねじ伏せた。

「儂は赦さん。
お前に手を出した時点で死刑は免れぬ。
…誰であろうと絶対、絶対に赦さないぞ。」

恨めしそうに灰を見つめる彼に、Aは罪悪感を感じて瞳を閉じる。

すると、左の脇腹に激痛が走った。
旧鼠に蹴られた箇所が再び悲鳴を上げる。
そして、それに呼応するかのようにあちこちで身体が痛み始めたのだ。

あまりの衝撃に立つことがままらなくなり、ソラに寄りかかる。

ソラも彼女の異変に気がついた。

「おい!」

それを目撃していたリクオが颯爽と前に出るも、ソラはそれを許さない。
今にも噛みつきそうな態度で、リクオの足を止めさせた。

「近寄るな!
この馬鹿は儂が運ぶ!!」

「…わかった。」

リクオは彼の主人が怪我を負ったばかりに、いつも以上の警戒心の強さを見せているのだろうと考え、あっさりと引き下がった。

Aは辛うじて動ける範囲を使い、彼の背中に乗った。

それを見届け、リクオは百鬼を連れて帰ろうとした時だった。

「待て!その人をどうする気や!」

ゆらの呼びかけにリクオや周りの者も歩みを止めた。

「お前が妖怪の主か…私はお前を倒しに来たんや!!次に会うときは絶対倒す!
…あと、その人を返して」

・・・


「…安心しろ。連れ帰って手当てをするだけだ。」

妖怪の主はそう言った。
しかし、彼女が妖怪の言葉なんて信じられるわけなどない。
悪の手先に人間を渡しておくなど、陰陽師として看過できるものではなかった。

残りの力で式神を召喚しようとするが…。

「待って、ゆらちゃん…。
私なら大丈夫だから。」

へにゃりと笑う彼女に手も足も出なくなる。
彼女をあんな風にさせてしまったのは自分のせいだとゆらは自責する。
しかし、彼女は自分のことなどお構いなしに笑顔を絶やさないのだ。

「ちょっと虚勢張りすぎちゃった。
…見てわかるだろうけど、私は妖怪に助けてもらってるの。…私の大事な友達。」

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桃子(プロフ) - めっちゃ面白くて好きです!!忙しいと思いますが更新頑張ってください! (2021年5月15日 22時) (レス) id: f758fcdb57 (このIDを非表示/違反報告)
氷麗 - とっても面白いです!色々忙がしいと思いますが、更新頑張って下さい!p(^-^)q (2020年8月6日 10時) (レス) id: 0b4aa008b9 (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー(プロフ) - みいらさん» コメントありがとうございます!とても励みになります( ;∀;)ノロマ更新ですが気長にお待ちいただければ幸いです。今日の夜に更新しますね! (2020年6月23日 12時) (レス) id: a8c312a3ba (このIDを非表示/違反報告)
みいら(プロフ) - とっっても面白いです!更新頑張って下さい!! (2020年6月23日 10時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月28日 19時

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