検索窓
今日:27 hit、昨日:6 hit、合計:56,511 hit

第三十三幕 ページ36

奴良家に到着し、真っ先に玄関へ向かう。
庭で待ち構えていたぬらりひょんは帰ってきたリクオに対し、口をひん曲げた。

「やっと帰ったかリクオ!
おまえはまーた学校なんぞにいっとたんか!」

「…あたり前でしょ?
中学生なんだから。」

人間を基準にした考え方にぬらりひょんの不平不満は止まらない。

「あのなあ…おまえはワシの孫。
妖怪一家を継ぎ、悪の限りをつくす男にならんかーー!!」

「断る。」

今世紀最大の拒絶の言葉。
今、リクオは自分が物凄い顔をしていたことを自覚しているだろうか。

Aは冷や冷やしながら、その一部始終を傍観していた。


「「ただいまー」」

「あ、若おかえりなさいまし。」

「Aも戻ったか。」

玄関に着くと何やら箱を囲ってムシャムシャと食べる本家の妖怪たち。

立派な和紙に包まれ、菓子と書かれた箱を認識した途端、リクオの目の色が変わる。


「何その高級菓子…。
じーちゃんまたどっかから盗んだの!?

悪行はほどほどにって言ってるじゃないか!!」


「ねえ、私にもちょーだい。」

勃発する二人に背中を向け、食い意地の張った娘は美味しそうにまんじゅうを食べる。

誰もリクオの気を収める者がいなかったため、納豆小僧が代表として説明をした。

「違いますよリクオ様。
お土産ですよ。
久々に鴆一派の鴆様が来てらっしゃるんですよ。」

鴆という名に反応したのはリクオだけではない。
Aもまた口に菓子を頬張りながら話を聞いていた。

・・・

静かな居間でししおどしの音が鳴り響く。
Aはあの部屋で鴆と会話をしているだろうと曲がり角の端からチラリと見る。

その下には豆腐小僧、納豆小僧、小鬼、三の口と縦に並んで部屋の入り口を見つめていた。

傍から見れば、怪しい覗き魔である。


「この面子が揃うとあの時の悪戯の日々を思い出すな。」

と小鬼が言う。

「何かすっごくワクワクしてきたよ!」

と、楽しそうな豆腐小僧。
納豆小僧も「ししし…」と含み笑いをする。
三の口は得に言葉を発することはないが、ぴょんとAの頭に乗る。

いずれも協力的な様子だ。

「あんたも盗み聞きなんて悪い人だ。
リクオ様と並ぶと余計あんたの方が妖怪らしく思えるよ。」

「えー。リクオが良い子すぎるんだよ。
盗み聞きは私の専売特許だからね。
このちょっとした背徳感が燃えるっていうか…」

次の瞬間、部屋から鴆の怒鳴り声が上がる。

第三十四幕→←第三十二幕 リクオ、義兄弟に怒られる



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (24 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
56人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月6日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。